2021.03.27
# マンガ

「夫のカラダが女性に!?」 突拍子もない“性”の物語を通して伝えたかったこと

漫画家・日暮キノコ氏インタビュー
日暮 キノコ プロフィール

「知らない人ほど決めつけてしまう」

――読者からの反響で印象的なものはありましたか。

真尋(まひろ)という男から女へ「異性化」したキャラクターが登場するのですが、性自認と異なる身体のせいで、人間関係を閉ざしてしまうんですね。

この真尋の苦しみは「LGBTQ」の「T=トランスジェンダー」や「Q=クエスチョニング・クィア※」にも重なる部分があるようで、「自分のようだ」と言ってくれる読者の方もいました。

さらに「個人差」を描いたことによって、読者の方からのお手紙だけでなく、身近な人からもカミングアウトを受けることがありました。打ち明けてくれたということは、少しでもその人たちの気持ちに寄り添えたのかなと、嬉しかったですね。

※編集部注:「クエスチョニング」とは自分の性別がわからない人や決まっていない人、迷っている人のことを指す。「クィア」はもともと「風変わりな」「奇妙な」という意味の言葉で差別的に使われてきたが、1990年代以降、それを逆手にとってセクシュアルマイノリティを包括する肯定的な言葉として使われるようになった。
最終話の結末はあまりに意外なものだった/第58話より

――日暮先生自身も作品を描いていて気付かされたことが多かったのですね。

そうですね。「知らない人ほど決めつけてしまう」が作品を通して一番言いたかったことです。ジェンダーをはじめ世の中のあらゆる事柄に対する見解は人それぞれなのに、知識として「十分知っている」と思い込むことで、自分の知らない現実を受け入れられなくなるのは危険なことだと思います。

――最後に、日暮先生の漫画づくりの根底にあるものはなんですか。

ずっと「生きている人」を描きたいという想いはあります。所詮は架空の世界の物語に過ぎないのかもしれませんが、それでも登場人物それぞれに生身の人間らしさが垣間見えるように描きたい。その中でなにか読者の方々の心に引っかかるものがあればいいなと思っています。

取材・文/原田加菜

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日暮キノコ(ひぐらし・きのこ)/神奈川県出身。第29回別冊フレンド新人まんが大賞の佳作を受賞し、2005年にデビュー。以後、少女誌を中心に活躍。2012年に開始した青年誌での初連載作『喰う寝るふたり 住むふたり』が大きな話題を集め、同作は2014年にテレビドラマ化もされた。著作に『モンクロチョウ』全3巻、『個人差あり〼』全6巻など。

『個人差あり〼』公開中のエピソード

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