*本記事は作品のネタバレを含むため、未鑑賞の方はご注意ください。
終わらない物語
『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』に望まれていたこと、それは終わらせることだった。25年ものあいだくりかえされ、結果として、その間に震災やコロナ禍などいくつものカタストロフィも通過してきた物語を終わらせること。
しかし結論からいえば、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』は、それができているようには思えない。

わかりやすい結論は、たしかにそこにあった。父を倒すこと、父になること、カップルを作り、自給自足ともいえるような共同体に戻ること。就職すること、地元に帰ること。多くの登場人物たちは、ついに居場所をみつけ、そこに落ち着いていった。
それにカタルシスがあったことも否定しない。四半世紀の間、ファンたちの熱い思いを受け止めてきたキャラクターたちが、勝手な思い入れから逃れ、ようやく自分の居場所をみつけたのである。
ただし問題はそうした解決が、安易なものといわざるをえなかったことにある。世の中の規範を受け入れ、家族をつくり、成長すること。多くの作品でくりかえされるそうした物語自体が悪いわけでは、たしかにない。
しかしわざわざ、それを『エヴァンゲリオン』でやる必要があったのか。そうした結末にたどり着くなら、TV版で、または最初の劇場版ですでにできたはずだし、あるいは新シリーズの劇場版もこれほど長引かせなくてもよかったはずである。
そうした陳腐な居場所探しの物語を拒否したからこそ、『エヴァンゲリオン』は、ここまで引き伸ばされてきたように思われるのである。