深い人付き合いの不要な社会を作った大人たち
――「最近の若い人間は……」と思っている中高年に向けてひとことお願いします。
石田 若い世代は友人を作ることがとても難しくなっています。そしてそれは大人が作ってきた環境が原因です。
たとえば僕は団塊ジュニア世代ですが、僕らが学生のころまでは結婚できない人生を想像する人はまだ少なかったし、子どものころには就職氷河期が来て仕事に就けない人が大量に発生するなんて思いもよらなかった。それは一方では窮屈だったかもしれないけれども、そのかわりもう一方では安定していると感じられた。
しかし今では若者には将来像は不安定なものに映り、恋愛・仕事・友人……あらゆる人間関係を得るために何かしら「自分を磨け」と言われ、語学や資格の勉強からコミュニケーション能力、身だしなみまで、さまざまな場面で自分の実力を証明させられ続ける社会のなかにいます。そうなると弱い部分はとてもじゃないけど他人には見せられない。
年長世代からすると若者は「人付き合いが良くない」とか「腹を割って話ができない」ように見えるかもしれない。でも深く人付き合いしなくても回る社会をそもそも我々はつくってきたわけです。そしてその流動的な社会は、誰かと人付き合いをするために、かつてよりもはるかに人に能力と負荷を求めるものでもある。ですからその最先端に生きている若者が、複雑かつ希薄な関係性のなかで生きていくための振る舞いをするのは仕方がない。上の世代には理解しがたいものに見えたとしても、そういう社会を“われわれ自体が作ってきた”ということを、せめて認識してほしいと思っています。