女性が性差別や性暴力について話すと、気にしすぎ、大げさ、過剰反応、敏感すぎる、いちいち騒がなくても、面倒くさい女だなあ…と返す。それは「性差別や性暴力なんて大した問題じゃない」と軽視しているからだ。
「過去に何度も燃えてるのにバカなの?」と真顔で聞きたいが、彼らは高学歴のエリートであり、東大卒とかもゴロゴロいる。
女性に比べて性差別や性暴力に遭いづらい。それは男性のもつ特権だが、人は自分の特権には気づきにくい。
去年、私が脚本を手がけた「性暴力を見過ごさない」動画が公開された時も、女性からは「超あるある」「リアルすぎて泣いた」との声が寄せられた一方、男性からは「本当にこんなことあるんだ」と驚きの声が寄せられた。
周りの男性陣も「ラピュタは本当にあったんだ…!」とパズー顔になっていた。それぐらい、男と女では見えている世界が違う。彼らにとって、動画に出てくる「ぶつかりおじさん」はUMAみたいな存在なのだ。
見えている世界が違うのは、性差別や性暴力だけに限らない。特権を自覚できない話について、以前こちらのコラムに書いた。
ドイツに住んでいた女友達いわく、彼女がドイツ人の夫とレストランに行った時と日本人の友人と行った時では、店員の態度が違ったという。その話を夫にすると「気にしすぎじゃない?」「きみはちょっと敏感すぎるよ」と言われたそうだ。
そうやって気にせずにいられること、鈍感でいられることが特権なのだ。そして、強者であればあるほど特権に気づきにくい。