日本の「全国学力テスト」は失敗…? 専門家が指摘する“知られざる”実態

「教育格差」の“見て見ぬふり”は許されない
川口 俊明 プロフィール

実態把握、進まぬワケは…?

社会的属性を調べようとしない傾向があることも問題だが、そもそも日本の教育行政には、適切に実態把握をする動機があまり働かないという点も指摘しておく必要がある。

既に多くの論者が指摘しているように、日本の教育政策は、関係者の思いつきで実行され、その結果も検証されないことが少なくない 。*7これはやむを得ない面もあって、たとえば全国学力テストの場合、教育政策を実施するのも、成果を検証するのも同じ文部科学省である。

これでは、まともな調査をしてしまうと、以前自分たちが実施した政策に効果がなかったという結果が出てしまい、組織にダメージを与える恐れがある。そのため適切な調査をせずに、「効果があった」ように見せかける方が、行政としては都合が良いということになりやすいのではないだろうか。実際、全国学力テストの調査内容は、その折々の情勢にあわせて頻繁に変更されてきた。

 

実は日本には、自国の子どもたちの学力の変化を測ることのできる自前の学力テストが存在していない。PISAやTIMSSといった国際学力調査のデータを利用しないと、自国の学力が上がった、もしくは下がったという基本的なことさえわからないのだ。

この数十年、日本では学力向上に焦点を当てたさまざまな改革が実施されてきたが、その成果を測る肝心の指標がないのでは、「改革のやりっ放し」*8 と批判されても仕方ないだろう。

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