富士ゼロックスの「特許王」が50代で会社を辞めてつくった「驚きの技術」とは

手を動かさずに「スイッチオン」と念じただけで、暖房にスイッチが入る――。

やがてそんな未来がやってくると語るのは、昨年5月末に富士ゼロックス株式会社(現 富士フイルムビジネスイノベーション株式会社)からスピンアウトし株式会社CyberneXを起業した馬場基文さん(54歳)。耳から出る脳情報を利用する技術「BCI(ブレイン・コンピュータ・インターフェース)」の開発者だ。

馬場基文さん

1997年に富士ゼロックスに入社以来、特許出願を280件以上手掛け、IH(誘導加熱)を利用した待ち時間ゼロのコピー機などの開発で総売り上げは推定4500億円以上を記録。文部科学大臣表彰科学技術賞(平成26年度)など数々の外部表彰も受け、富士ゼロックスで「特許王」と呼ばれてきた。そんな馬場さんが、50歳を過ぎて起業することを決意したのはなぜか。そこには「ゼロイチで新しい価値を生み続ける」ことへのこだわりがあった。

 

脳波だけでコミュニケーションする時代が来る

――BCIとはどのようなものなのでしょうか。

馬場: 脳の情報を活用して、コミュニケーションしたり機器を操作する技術です。例えば「エアコンオン」と念じて耳から脳波を送るとエアコンが付く。インターフェースのデバイスはイヤホンですが、装着するだけで物を作動させたり、コミュニケーションできるんです。この以心伝心の技術が発達すればスマートフォンもPCもなくなっていくと思います。

そもそもインターフェースはどんどん変わってきたんです。今のインターフェースはスマートフォンに機能が集まり過ぎていて、みんなが自然に使えるものになっていないのです。実は機能が分離していく流れもあり、それがGoogleHomeやAlexaのようなスマートスピーカーなんです。GoogleHomeでできることは全部スマホでできます。手で操作するのが難しいし面倒なので、「オッケーグーグル?」と呼び掛ける装置が出てきたんです。

近い将来、私たちの技術で高齢者の人たちの問題も解決できます。手足が動かせない人、アルツハイマーの人でも伝える機能が残っていればコミュニケーションできる。今は脳情報から得た「好き」「嫌い」などの情報をマーケティングなどに活用するサービスなどを展開していますが、いずれはイヤホンを通じた新しいコミュニケーションを実現させようとしています。

現在開発中の、脳情報が測れる機能のあるイヤホン(Ear Brain Interface)

――コピー機の開発をしていた馬場さんがBCIの開発に取り組んだきっかけは何だったのでしょう。

馬場:会社全体の技術戦略を任されていたのですが、ペーパーレスの時代にコピー機をはじめとしたOA機器に新機軸の技術戦略は要らないと判断しました。そこで2015年にOA機器の事業から引退し、他社と組んで新しい価値創造の取り組みを開始しました。20ぐらいのプロジェクトを立ち上げましたが、その一つがCyberneX社が今取り組んでいるBCI(ブレイン・コンピュータ・インターフェース)だったんです。

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