サグラダ・ファミリアはいつ完成する?
1882年に建設が開始された世界遺産・サグラダ・ファミリア教会は、1980年代には、完成までに300年はかかると言われていた。しかし、その後30年あまりの建築工法の進化などによって工期が劇的に短縮し、ガウディ没後100年の2026年には完成すると伝えられるようになった。

しかし残念なことに、2020年9月に建設責任者が、世界的パンデミックによる観光客の減少で、これまで予定してきた2026年の完成がほぼ不可能となったとの見方を示した。莫大な建築費用は寄付金と観光客の入場料で賄われている。2019年7月の入場者数は約1万5000人であったが、2020年は2000人ほどまで激減したそうだ。
1日の入場者数が1万5000人というのは「未完成の建物」としては、世界最高峰だと思う。2005年にユネスコの世界文化遺産に登録されたときには「いつ完成するのかわからない建物」であったわけだ……
しかも、サグラダ・ファミリアは、「アントニ・ガウディの作品群」を構成する物件の1つとしての登録だ。
2019年に「フランク・ロイド・ライトの20世紀建築作品群」として米国内の建築作品も登録された(ライトは、現在2500億円の建て替えで話題になっている帝国ホテルの通称「ライト館」(解体後、一部、明治村に移築)など日本にもいくつか作品を残している)。しかし、個人の作品群が世界遺産に登録されることは、第一級の賛辞と言って良いだろう。
ガウディが世界の歴史に残る偉大な建築家であることは疑いようがないが、未完成のサグラダ・ファミリアが、これだけ世界の人々を魅了するのには「ガウディの人生そのものが投影された作品」ということが大きく影響していると思う。
確かに「未完だから注目される」という側面もあるのだが、何回もの危機を乗り越えてガウディの遺志を人々が引き継ぐのは、ガウディの人生そのものの力だといえよう。
古代エジプトの墓で王の名前が繰り返し書かれているのは、肉体が死を迎えても、自分の名前が呼ばれている限り「生きている」という考えからだ。逆に、「名前が呼ばれなくなった時に人間は本当の死を迎える」ということである。
パンデミックのおかげで「死」の感覚が身近なものになったが、「(肉体の)死の後も生き続ける」という選択をしたガウディの生き方は我々にも大いに参考になると思う。