2021.04.06
# 政治政策

盛り上がる「ベーシック・インカム」政策、その「大きな落とし穴」に気づいていますか?

井手 英策, 関 良基, 佐々木 実 プロフィール

佐々木 竹中=フリードマン型のベーシック・インカムを取り上げたのも、予算の制約を考慮すると、その方向に向かう可能性が高いと考えたからでした。

井手 現実の問題として、ベーシック・インカムで現金を配ったからといって必ずサービスにアクセスできるとは限りません。子どもの分の給付金を親に渡したら、借金の返済にまわしてしまうかもしれない。おまけに、福祉制度が縮小されて医療費が全額自己負担にでもなれば、病気になったときのお金を事前に使いこんだことになる。でも社会は助けてくれません。お金はもう渡したんだから。つまりは、究極の自己責任社会ですよ。

 

莫大な予算をどう捻出する?

佐々木 ベーシック・インカムに比べて安上がりということはわかりましたが、それでも医療、教育、子育て、介護、障碍者福祉の費用を政府が負担するとなると、莫大な予算が必要です。井手先生は『幸福の増税論』(岩波新書・2018年)で試算されていますね。政策提言の柱は、消費税の税率を19%まで引き上げればベーシック・サービスは実現できるというものでした。

 医療、教育、子育て、介護、障碍者福祉のサービスを無償化するという、井手先生の考えには基本的に賛成です。そのうえでお聞きするのですが、「消費税増税ありき」ではかえって反対する国民が多くなるのではないでしょうか。

トマ・ピケティが『21世紀の資本』で明らかにしたように、資本収益率が経済成長率を上回ると必ず格差が生じる。現在の日本では、所得が1億円を超えると逆に税の負担率が下がっています。なぜかというと、株式の売却益や配当金への税率が20%止まりだからです。金融所得への課税は税率を40%あるいは50%にまで引き上げてもいいのではと考えていますが、まずこうした不公平な税制を改めてから消費税の議論に移るべきではないでしょうか。そうでないと国民の納得が得られないようにおもいます。

井手 少し現状の認識が違いますね。前回の衆議院選挙と参議院選挙で圧勝した候補者たちは、じつは「消費増税」を主張していました。「減税」「増税凍結」を主張した人たちは惨敗しているんですよ。国民は取られることだけでなく、税収を何にどう使うかにも関心をもっているということです。

ベーシック・サービスが消費税の増税を抜きに考えられない理由は単純で、消費税は税率を1%上げると2.8兆円の税収増になります。富裕層の所得税を1%上げても1400億円にしかなりません。かりに法人税をベーシック・サービスの財源にするなら30%以上の増税が必要ですが、現実的ではありませんよね。

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