井手 関先生がおっしゃるように金融所得への課税を40%まで上げても、得られる税収は消費税1%分にもなりません。『幸福の増税論』では「本書が示唆するのは、消費税の増税と富裕層への課税をパッケージ化し、負担と受益のバランスのとれた税制改正によって『くらしの自己負担が減った』という『成功体験』をし、次の増税につなげていくという戦略である」と述べました。
金融所得の税率を上げることに反対ではありません。むしろ賛成です。ですが、ベーシック・サービスを実現するには同時に消費税を上げることがどうしても必要です。そうでなければ、富裕層叩きにはなっても、結局、今苦しんでいる人を見殺しにすることになるからです。

関 私が言いたかったのは、格差を助長する制度を改めなければ、問題の根源である格差の拡大は収まらないということです。そのためには、金融所得への課税を強化して、資本収益率を経済成長率より低くしなければなりません。
そういう意味で、議論の順序として、消費増税より金融所得への課税と法人税の引き上げが先ではないかと。世界的な潮流をみても、タックスヘイブンを回避するためにOECDで共通の最低法人税率を15%に設定しようという動きがありますよね。個人的には25%まで上げてもいいと考えていますが。
井手 繰り返しになりますが、金融所得税や法人税を引き上げることに反対ではありません。ただ、消費税の前に、とこだわる理由はわかりません。消費税を使って、豊富な税収を思い切って使う。それが、本当に困っている人たちの暮らしを楽にする近道だと申し上げています。
関 もう少し言わせていただくと、現在の地球レベルでの課題は格差問題と気候変動です。私の専門は環境政策ですが、これから環境税が非常に重要な役割を果たすと考えています。消費税は一律に引き上げるのではなく、環境への負荷に応じて税率に差をつける税のあり方はどうでしょうか。