なぜクオータ制が進まないのか
ジェンダーギャップ指数でもっとも深刻なのが政治分野だ。156カ国中147位。衆院議員に占める女性の割合は9.9%。この数字を上げるために有効なのが、あらかじめ議席や候補者の中に女性を一定数割り当てるクオータ制と言われている。
日本では2018年に「政治分野における男女共同参画推進法」が成立し、政党が男女の候補者を均等にする努力義務が課せられたが、目標達成にはまだ程遠い。

森発言を受けて、二階俊博幹事長に党内の女性起用を提案した女性議員の一人である稲田朋美元防衛相は、私のインタビューにこう話した。
「提言には自民党の立候補者の中に女性を30%、将来的には35%に、と入れました。(中略)私は昨年比例名簿の上位から女性・男性と交互にと提言したのですが、党内の男性議員からものすごく批判されて、それがきっかけで私から離れていった人もいます。自分の議席を失う人もいて、政治生命に関わることなので反対は根強い」(ビジネスインサイダー「稲田朋美氏が語る「わきまえていては突破できない」離れる支持層との間で抱える葛藤」より)

自民党内でも本音はともかく、さすがに正面切って「女性活躍」や「男女平等」に反対する人はいないだろう(それこそ政治生命に関わる)。だが、実際にそれを具体的な政策で実現しようとすると、夫婦別姓問題のようにイデオロギーや支持層との関係で反対する人が現れ、さらに自分の身に直接影響があるとなると一斉に反発される。
女性活躍とはこの「総論賛成、各論反対」、中でも男性がポジションを失う、空ける問題が最大のタブーなのだ。そこに時折「女性で政治家をやろうとする人がいないから」「能力がある人がやればいいだけで、女性の比率を増やす必要はない」という議論も巻き起こるが、それ以前に「女性が活躍できる環境がない現状」を変える必要があるのだ。
だからこそ、そろそろ「足をどけて」から「席を空けて」と訴えないと、いつまでたってもジェンダーギャップは解消されないと思う。