このままでは人類はあと100年もたない?
生き物が死ななければいけないのは、主に2つの理由が考えられます。
その一つは、すぐに思いつくことですが、食料や生活空間などの不足です。天敵が少ない、つまり「食われない」環境で生きている生物でも、逆に数が増えすぎて「食えなくなる」ことはあるでしょう。この場合、絶滅するくらいの勢いで個体数の減少が起こり、その後、周期的に増えたり減ったりを繰り返すか、あるいは少子化が進み、個体数としては少ない状態で安定し、やがてバランスが取れていきます。
この生物学をヒトに当てはめてみます。たとえば現在の日本人は、食料や生活空間の不足はほとんどないのですが、保育所や教育環境、親の労働環境など、いくつかの子育てに必要な要素が不足しています。それにより、子供を作れなくなる少子化圧力が強まり、出生数は減り続けています。死亡率が上がるのも、出生率が下がるのも、人口が減るという意味では同じです。

この減少が、日本人の絶滅的な減少に繫がるか、あるいは出生数が低い状態で安定するのかは、今後これらの少子化圧力要因がどのくらい改善されるかにかかっています。不足は衣食住の物質面だけでなく、精神面においてもあります。子供を作りたくなくなるという将来の不安要素は、当たり前ですが確実に少子化を誘導します。
私は、何も対策を取らなければ、残念ですが日本などの先進国の人口減少が引き金となり、人類は今から100年ももたないと思っています。非常に近い将来、絶滅的な危機を迎える可能性はあると思います。未来への投資は簡単ではありませんが、手遅れにならないうちに真剣に取り組むべきです。
「多様性」のために死ぬ
さて、話を元に戻します。生き物が死ななければいけないもう一つの理由は、本書をお読みになった方はもうおわかりのことと思いますが、「多様性」のためです。こちらのほうが、生物学的には大きな理由です。
というのは、先に述べた「食料や生活空間の不足」は結果論で、しかも限られた空間で生活している生き物の話であって、一般的な「死ななければならない理由」ではありません。不足が生じた場合、どこか新しい場所に移動したり、新しく食べられるものを探し出したりすればいいのです。本当の死ななければならない理由は、これよりも、もっと根本的なことです。