なぜ『花束みたいな恋をした』は“想像以上のロングヒット”を記録したのか、ひとつの答え

2021年1月29日に劇場公開を迎えた映画『花束みたいな恋をした』のフィーバーが、止まらない。公開初週の興行収入ランキングで初登場1位を獲得すると、その後6週間にわたって首位をキープ。公開から2カ月以上経っても、トップ10圏内にランクインし続けている。

4月5日時点の数字では、累計で観客動員265万人、興行収入35億円を突破。『ヤクザと家族 The Family』『すばらしき世界』『あのこは貴族』など、今年の日本映画は粒ぞろいだと映画好きの中では話題だが、本作においてはコア・ライト関係なく映画ファン全体に、いや正直言って普段映画館に足を運ばない層にまで広がっている印象だ。

本作の公開館数は公開初日の段階で全国350館だが、直近だと同じ菅田将暉が主演した『糸』(配給:東宝)や、『望み』(配給:KADOKAWA)と同規模だ。ただ、本作の配給が東京テアトル&リトルモアと考えると、異例と言っていいほどの規模。

東京テアトルの直近の作品は『ソワレ』『星の子』『あのこは貴族』など中小規模のものが多い。作品自体はいずれも力作ではあるが、『花束みたいな恋をした』はメジャー大作級の館数となった(ただ、新型コロナウイルスの影響で国外・国内のメジャー大作が公開延期したことが少なからず影響しているため、イレギュラーなケースといえそうではある)。

ちなみに、筆者が本作を観賞したのは昨秋の内覧(業界向けの招待制試写会)でのこと。ボロ泣きしたため記憶が曖昧ではあるが、その時点ではまだ350館規模に展開していく作品との認識はなかった。コロナ禍の劇場公開作品の多くがそうだが、その都度の状況に合わせて推移していったのだと推察される。

(C)2021「花束みたいな恋をした」製作委員会
 

では次に、国内興収30億円以上の日本映画(実写)を見ていこう。

2020年は『今日から俺は!!劇場版』(配給:東宝)が53.7億円、『コンフィデンスマンJP プリンセス編』(配給:東宝)が38.4億円。2019年では『キングダム』(東宝/ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント)が57.3億円、『マスカレード・ホテル』(配給:東宝)が46.4億円、『翔んで埼玉』(配給:東映)が37.6億円、『記憶にございません!』(配給:東宝)が36.4億円。2018年は『劇場版コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』(配給:東宝)が93.0億円、『万引き家族』(配給:GAGA)が45.5億円、『DESTINY 鎌倉ものがたり』(配給:東宝)が32.1億円、『カメラを止めるな!』(配給:アスミック・エース/ENBUゼミナール)が31.2億円だ(一般社団法人 日本映画製作者連盟調べ)。こうして過去作品と比較すると『花束みたいな恋をした』の興収35億円突破の凄さが、より実感を帯びてくるのではないか。

となると気になるのは、『花束みたいな恋をした』がなぜここまでブームになったのか? だ。この部分に関しては既に多くの記事で“考察”されているため、あくまで個人的な考えを簡潔に記していきたい。

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