“新世代のジャンプ漫画”たるゆえん
まずは、『呪術廻戦』のごく簡単な概要をおさらいしよう。
本作は、人に害をなす“呪い”と、それを祓う“呪術師”の戦いを描く物語。「呪いの王」と称される両面宿儺の“器”となった高校生・虎杖悠仁が、呪術師としての訓練を積むために養成機関である東京都立呪術高等専門学校に転入し、研鑽を積んでいくさまが描かれる。
「主人公が最強の敵になる危険性があるため、死刑対象になる」は『青の祓魔師』、「学校に入学してトレーニングする」は『NARUTO -ナルト-』や『僕のヒーローアカデミア』、「他者を助けるため、過酷な宿命を背負う」は『BLEACH』(芥見自身も、「第1話の叩き台は『BLEACH』」と公式ファンブック内で証言している)、「戦闘シーンが極めてロジカル」は『HUNTER×HUNTER』と、これまでのジャンプ漫画と通じる要素を複数持った構造になっており、大枠は「歴代人気作品のDNAを受け継いだ、新世代のジャンプ漫画」といえるだろう。
『僕のヒーローアカデミア』の作者・堀越耕平が「次にジャンプを背負っていく漫画です」、『ワールドトリガー』の作者・葦原大介が「先達への敬意(リスペクト)とそれだけで終わらない作家性を感じます」と評しているところにも、そのエッセンスは感じられる。
芥見自身も、公式ファンブックの中で「小学生のときに読んだ『BLEACH』が漫画家を志した初期衝動」という趣旨の発言を行っており、キャラクターデザインにおいて『BLEACH』や『HUNTER×HUNTER』『NARUTO -ナルト-』ほか、多数の漫画の影響を受けたと語っている(『新世紀エヴァンゲリオン』は言わずもがな)。
つまり、『呪術廻戦』には、その根底に漫画好きが愛する人気作品のエッセンスが流れているため、そもそも我々読者との間に「同志感」とでもいうべき“つながり”ができているのだ。
そのうえで独自性のある設定や展開をたっぷりと盛り込んでいるため、「同じカルチャーで育ってきた気鋭の作家が、面白いものを作った!」という感覚で楽しめる部分が大きいように思う。
ちなみに芥見は1992年生まれの現在29歳。同世代の読者から圧倒的な支持を受けているのも、納得だ。