【ゼロからわかる】なぜ『呪術廻戦』はこの時代に“絶大な支持”を得るのか?

『呪術廻戦』が反映する時代性

ただ、『呪術廻戦』が過去のヒット作のごった煮になっていないのは、芥見の作り手としての圧倒的なセンスにある。

本作は元々、「ジャンプGIGA」で掲載された『呪術廻戦 東京都立呪術高等専門学校』(全4話)が好評を博し、“続き”を描く形で「週刊少年ジャンプ」での連載を勝ち取ったもの。世に出るまでにはすさまじい苦労があったというが、当時からべらぼうに面白い漫画を描く作家であったことは確かだ。

その後、よりスケール感が増した『呪術廻戦』だが、画についていうと、荒々しいアクション描写に目を奪われるだろう。芥見の特長として、スピード感あふれる極めて動的な戦闘シーンの演出が挙げられる。これは彼がアニメ・実写映画通であることも大きいのではないか。コマ割りに筆致等々、ドライブ感が際立っており、漫画という“静止画”の連続でありながら、読んでいる側の脳内に“映像”としてインプットされる快感がある。

また、「呪術」という目には見えない力を使いながらも、「殴る・蹴る」といったリアルファイトに重きが置かれているのも興味深い。

非常にざっくりしたアクション映画のトレンドの話をすると、達人たちが絶技で“魅せる”戦闘シーンから、『ボーン・アイデンティティー』(2002)頃を境に、東南アジアの武術・カリやシラットを取り入れたリアルな実戦形式へとスライドしていった流れがある。その系譜にあるともいえる『ザ・レイド』(2011)は、『呪術廻戦』のアクションシーンにも影響を与えたそうだ。

 

そうしたアクション描写のベースがアニメ版で一層強化されたため、爆発的な人気を獲得したとみることもできるだろう。要は、『呪術廻戦』は動きの魅せ方においても、時代の流れを敏感にとらえ、反映しているということ。リアルアクションにはつきものの「重力」と「痛み」への意識もしっかりと盛り込まれており(特に「痛み」においては、作品のテーマである“死”とも明確に結びついている)、現代という時代性を強く感じさせる。我々が没入しやすいファクターとして、機能しているのだ。

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