医療ひっ迫が懸念される大阪府の状況をデータで見ると、以下のようになっています。
吉村知事によると(2021年1月19日)、大阪府でコロナ患者を受け入れている民間の医療機関は、救急受け入れと内科・呼吸器内科医師のいる病院に限ってみた場合でも10パーセント、病床は0.6%とのことです。
大阪府の病院の病床は、合計で104,566床(一般病床:65,301、精神病床:18,165、療養病床:20,632、結核・感染症病床:370)となっていますが(日本医師会データ)、現在、新型コロナ用に確保できているのは、最大1990床(軽症・中等症用:1766床、重症者用:確保数は224床)とされています。
ちなみに、大阪府では、2月の緊急事態宣言解除後に、確保していた病床を減らすように指示がなされたそうで、ステージに合わせて病床を増減させるという理屈は理解しますが、解除したら感染が再拡大することは当然想定されたことであり、また、病床は一度減らしたら急には増やせないものなので、バッファーを多めに取っておくべきだったろうと思います。
しかし、医療ひっ迫問題の根幹は、もっと別のところにあります。そもそも日本は、新型コロナ用に確保された病床数が少ないので、分母が少ないために、分子が増えたら、一挙に病床がひっ迫してしまうということになります。
新型コロナ病床確保の具体的事例
新型コロナ病床が増えない理由の一つは、上述のように、民間病院での受け入れの少なさがありますが、日本は民間の中小病院が多く、実際、ゾーニング(コロナ患者とそれ以外の患者の区域を分ける)が難しい、人工呼吸器やECMOなどの設備や、感染症専門医がいないといったことから、コロナ患者の受け入れができない場合も多くあります。
感染・クラスター発生のリスクをできるだけ拡散しないようにすること、他の疾病の治療をすることも必要であること等も踏まえれば、多くの中小病院で少しずつコロナ患者を受け入れるよりも、大きな病院でまとまった数の患者を受け入れる方が、効率的・効果的だといえます。
新型コロナ病床を増やした他国の事例を見ると、日本とは、医療制度や、国・自治体が持つ病院への権限の強さの違いなども実感するわけですが、国内の事例も併せて参考にすると、空施設利用や新設工事でコロナ専門の病院・病棟を作る、地域の病院が連携して役割分担をし、他の疾病の患者やコロナの回復患者を他の病院で受け入れるなどにより、集約を図ることが考えられます。