マンパワーを確保できるか
病床だけがあっても、適時に適切な治療は行えません。ハコ(病床)やモノ(ECMO等)だけでなく、治療を行うヒト(医療従事者)が併せて必要であり、喫緊の状況を乗り切るために、他地域からや離職中の方に参加いただくとともに、中長期的な視野に立った人材育成も欠かせません。
例えば、ECMO治療には、24時間態勢でモニターなどの監視が必要で、ECMOに精通した医師、看護師、臨床工学技士など10人以上がチームとして対応が必要といわれます。
2020年12月に稼働した「大阪コロナ重症センター」は、大阪急性期・総合医療センターの敷地内で、プレハブ施設内に人工呼吸器を配備した30の重症病床がありますが、4月14日時点で使用できるのは16床。理由は、30床を稼働させるためには120人の看護師が必要だが、同日時点で72人しかいないためです。
全国知事会や府内の医療機関などから看護師を派遣してもらっていましたが、3月に感染者が減少したことなどで応援の看護師は引きあげ、4月1日時点では13床まで病床を縮小したところに、今回の急激な感染再拡大が起きました。看護協会は、「人工呼吸器をつけた患者のケアの経験があり、現在離職やフリーランスで働いている人」を募集し、センターに派遣することを想定しています。
感染再拡大の要因の正体
急激な感染拡大の大きな要因のひとつは、感染力が強くなった変異株の流行です。
変異株のスクリーニング検査の結果を見ると、急速に従来株が変異株に置き換わっていっており、陽性者のうち、東京都(健康安全研究センターによる調査分)では、3月29日から4月4日の週で、74.1%が変異株(41.8%がE484K、32.3%がN501Y)、大阪府では、3月21日〜27日で、66.5%がN501Yの変異株となっています。
このままのペースで感染者が増え続けた場合、関西だけでなく関東や中京圏、沖縄でも5月前半には、ほぼ変異株に置き換わると予想されています(4月14日厚生労働省アドバイザリーボード)。
一口に「変異株」と言っても、変異の仕方によって性質が異なります。現在日本で流行している変異株は主に、感染力が強くなっているといわれる「N501Y」と、ワクチンの効果が弱まっているといわれる「E484K」があります。
「E484K」と呼ばれる変異は「スパイクたんぱく質」の484番目のアミノ酸がグルタミン酸(略号E)からリシン(略号K)に置き換わっているという意味
英国型の変異株(N501Y)は、感染力、重症化率、致死率ともに、従来型より高くなっているという研究報告があり、また、若い世代でも重症化するケースが出ています。N501Yは、重症化するまでの日数が短く、一方で、症状が落ち着くまでの日数が長くかかる、という報告もあり、体内に侵入・増殖するウイルス量が多くなっている可能性が指摘されています。