なぜオルタナ右翼はマンガのカエルを「神」として担ぎ上げたのか?

「カエルのぺぺ右翼化事件」を考える

2021年1月6日、首都ワシントンDC。大統領選挙の不正を訴えて国会議事堂を襲撃するトランプ支持者たちの中に、一匹のカエルを見た。

Make America Great Again(MAGA)のスローガン、アメリカ建国期の民兵や南北戦争の南軍旗、トランプ救世主説の陰謀論Qアノン……様々なイメージを身にまとう群衆。そこに、キモカワなカエルのマスクを被る人物がいた。ナチスのハーケンクロイツ風に「K」の字をデザインした旗を体に巻きつけている。MAGA帽子にカエルロゴのTシャツを着た人もいる。

ニューヨークタイムズ記者の投稿(現在は削除)
 

インターネットミーム(=ネットのネタ画像)として有名な「カエルのぺぺ(Pepe The Frog)」である。SNSで目にしたことがある人もいるだろう。しかしこのキャラクターは、単なる有名ミームではない。作者の意に反してそのイメージがネットで拡散され続け、ついには白人至上主義・排外主義など極右思想のシンボルになってしまった、悲劇のカエルなのである。

現在公開中のドキュメンタリー映画『フィールズ・グッド・マン』は、ペペが右派のシンボルとなっていく顛末を丹念な取材から描き、ミームというネット文化の構造に肉薄している。本稿では、この映画が描く「カエルのペペ右翼化事件」――とここでは仮に名づけておこう――について考えてみたい。

アメリカ文化論を専門にする筆者は、普段フィールドワークによる現地取材を重視して研究をしている。その一方で、大統領選でトランプ支持者がぺぺと紐づけられて話題になった2016年頃からは、インターネットミームに関する調査にも携わってきた。当時住んでいたフィラデルフィアでデモや集会などの現場に足を運んで取材をしていた時、人々の活動がネットの動きと連動していると気がついたのがきっかけだ。

日本に帰国してから、とくにコロナ禍以降は現地へのアクセスが難しくなったため、ネット上の政治文化について研究してきた(関連記事:「ハッシュタグをハックする:K-POPファンのブラック・ライブズ・マター運動」「正義の荒らし?――警察アプリとTikTokをめぐるK-POPファンの平和攻撃」共にFENICS)。

昨今のネット空間では陰謀論やデマが活況を呈して穏やかならぬ日々が続いているが、この記事が読者にとって少しでもそれらに立ち向かう処方箋になると嬉しい。

本稿はネタバレを含みます

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