88歳になっても“働かされ続ける”…引退できない「高齢開業医」の悲惨な現実

娘と孫のために、老体にムチを打って…
畠中 雅子 プロフィール

引退していてもおかしくない年齢の敏夫さんがリタイアするのをためらっているのは、2人の娘さんたちがいるからです。敏夫さんには50代の娘さん、美代子さんと貴子さんがいて、2人とも敏夫さんの病院で事務の仕事をしています。

勤務時間は朝9時から15時まで、昼休憩を除くと1日5時間勤務です。さらに勤務日数は週4日にもかかわらず、2人とも手取りで25万円もの給与をもらっているそうです。

娘さんは2人ともシングルマザー。美代子さんは30代のとき、貴子さんは40代に入った頃離婚して、子どもとともに実家の山下家に戻ってきました。美代子さんには1人、貴子さんには4人の子どもがいます。

敏夫さん・秀子さん夫妻は、娘2人に加え、5人のお孫さんとともに、病院と隣接した敷地内にある自宅で、9人で暮らしています。また長男の文彦さんは、都市部の別の病院で医師として働いています。

 

生活費も学費も、敏夫さん持ち

敏夫さんと同居している5人のお孫さんたちは全員、現在大学や大学院に通っています。お孫さんたちの学費はすべて祖父である敏夫さんが払っており、年間で700万円近くかかっています。

「個人病院の経営者なんだから、年間700万円くらいの学費は楽に払えるのではないか」と感じるかもしれませんが、実のところ病院経営は赤字続き。診療科と雇っている医師を減らしたことで、患者の数もかなり減っているのに、娘さん2人を事務員として雇い続けていることも、赤字の原因になっています。

食費をはじめ、水道光熱費など娘さんたちの生活費はすべて、敏夫さん夫妻が支払っています。長女の美代子さんは、子どもの学費の面倒を見てもらっているものの、生活自体は質素で、貯蓄もそれなりにあるとのこと。

一方、4人の子どもを連れて実家に帰ってきた次女の貴子さんは、離婚にいたるまでの過程で体調を崩してしまい、戻ってから1年くらいは家事も育児もできず、部屋に閉じこもっていたそうです。

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