ご存じの方も多いと思うが、現在、研究業界の若手は任期の長い職に就くのが非常に困難な状況にある。博士を取得後、研究職に就けたとしても任期が1〜3年程度の短期職がほとんどであり、その後「ポスドク(正式にはポストドクター)」と呼ばれるこの種の短期職を10年以上渡り歩くのが研究者であり続けるモデルケースとなっている。
もちろん任期が5年を超えるような長期職の募集もあるが、その数は短期職に比べて圧倒的に少なく、短期職をつなぐ生活から脱するのは非常に難しい。また、この短期職には年齢制限があるケースも多く、短期職をいつまでも渡り歩ける訳ではないという不安も常に付きまとう。一つの短期職に就いてもその次への不安を持ち続け、それがキャリアが進むに連れて増していくのだ。

さらに、研究業界では未だに性差別が根強く、女性の就職はより厳しい状況にある。過去の記事「子連れの妻が「Dr.」であることを空港で疑った日本の深い闇」にも書いたが、学生の時点でセクハラやマタハラなどのハラスメントを受けるケースも目立ち、また他の職種同様に男性研究者の家事育児への参加が目に見えて少ない現状では、女性が男性同様にキャリアを進めていくイメージを持つことは困難である。
このような厳しい就職状況の中、長期職に就けたとしても、そこには大量の研究「以外」の業務が待っている。