しばしば多額の借金があると指摘される日本の国家財政。「日本は資産を持っているから大丈夫だ」と擁護する人もいるが、明石順平氏は「現在の財政は異常だ」と話す。実情がどこまで悲惨なのか、新刊『財政爆発』を一部編集したうえで、国の貸借対照表の数字を使ってリアルに説明していこう。
資産があっても、売却できない…
日本財政の話をすると、必ず「日本は資産を持っているから大丈夫だ」と言ってくる人がいますので、それについて触れておきます。
2018年度末時点の国の貸借対照表が図です。

これを見ると、国は約670兆円もの資産を持っています。これを根拠に、「国の借金を語るなら、資産を差し引け」と主張するのです。資産を差し引くということは、いざとなったら全部売るということでしょう。
まず、資産を全て売り払った国家など、人類の歴史上存在しません。当たり前でしょう。国の資産を売り払ってしまえば、国の運営ができません。例えば、国の資産には自衛隊の基地や武器も当然入るわけですし、皇居も入ります。それを全部売ると言うのでしょうか。文字通り売国になりますが、不可能なのは明白です。
このように深く考えなくても異常なことを言っているのが分かりますが、個別に見ていきましょう。まず、最も金額が大きいのは有形固定資産です。これは道路や橋、堤防等です。これを売りに出してもいったい誰が買うのでしょう。そして、買った人はどうやって元を取るのでしょう。