2021.04.19

「私が損をしているのだからお前も損をすべき!」

足を引っぱりあう日本人脳 *中野信子
中野 信子, ヤマザキ マリ プロフィール

日本ではたったの一度の不倫騒動も命とり

身近にもスパイト行動はたくさん見受けられます。

誰かがいい思いをしているとそれに嫉妬して、「あいつはダメだ」と周りに吹聴したり嫌味を言う。人を祝福したり称賛することができない。こうした人々の中では、誰かが得するだけで揉めごとの原因になりかねません。

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この環境下では、宝くじが当たろうがビットコイン長者になろうが、余計なことは話さず、素の感情は見せないのが得策なのかもしれません。カラハリ砂漠のサン人は自慢すると後ろから味方に討たれかねないので、どんなにいい獲物を仕留めても、自らの猟果をみんなの前で自慢することはないといいます。日本社会にも似たところがありそうです。

政治家や芸能人のゴシップ記事で、炎上しやすいのが日本特有である理由の一端も、これで説明することができるかもしれません。芸能人も一度不倫騒動があれば人生が終わるようなレベルの転落をしてしまいます。やはり日本人には有名人を叩くのが好きなスパイト精神があるのでしょう。有名税という言葉は日本特有かもしれません。自分よりもおいしい思いをしている有名人は「けしからん!」と考えるのです

論理的に考えれば、仕事ができることと人間的に高潔であることは別物です。「英雄色を好む」と言われるように、偉大な仕事を成し遂げる人はテストステロン値の高い人が多く、色恋沙汰も必然的に多くなってしまう傾向も否めないでしょう。仕事で結果を出しているのであればその人のプライベートはほとんど関係ないはずで、政治家が不倫をしようが日本をよくしてくれるのなら、特に糾弾する必要はないのではとも個人的には思います。

誰に対しても高潔さを求められる社会は息苦しいものです。

日本にいまだによくある根性論や美徳を振りかざして他者を追い詰める行為も、スパイト行動の一種と言えます。モラハラ、パワハラとも言われますね。成長にまったく寄与しないにもかかわらず、お前のためだ、などと言って理不尽な倫理観でねじ伏せようとする行動です。児童虐待の中にもこうした側面を持つものがあり、痛ましい報道に触れるたびに、胸が苦しくなるように感じます。

「自分たちはこんな苦労をしてきたのだからお前も苦労すべきだ」論を押しつける振る舞いもよく見られるように思います。今の若い人がおいしい思いをしているのを見るだけで、許せなくて足を引っ張ろうとする。これも、スパイト行動の典型的な例です。

あなたの人生には、有限の時間しかありません。足を引っ張るような人の多い環境で、息を詰めるように暮らしていくのは大変なことです。できればもっと誰かを祝福したり素直に称賛できたりするような、器の大きさを持った人と楽しくすごしていきたいものです。

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