2021.04.16
# 企業・経営

「3年でやめる若者」は相変わらず3割…それはオジサンが思うような「深刻な事態」なのか?

前川 孝雄 プロフィール

バックパッカーで海外をまわってきたような留学生たちを教育し、ITエンジニアに育て上げ派遣するアレックスソリューションズという会社がある。ビジネスマナーからIT知識・スキルまで教え込み、育て上げたITエンジニアが派遣先の世界的企業に引き抜かれてしまうも少なくないそうだが、代表の大野雅宏さんは意に介さない。

むしろ「社員個人にとってはキャリアアップになりますから、いいことだと考えています。もともとはフリーターなどをしてくすぶっていた人が、世界的企業のエンジニアになるってサクセスストーリーじゃないですか」とまで話す。さすがに、それで経営が成り立つのかと疑問に思って質問したところ、元社員とのOB会(アルムナイネットワーク)を組織し、交流を続けることで、OBが新たな発注元になり業績向上に貢献してくれていると話してくれた。社員の離職を逆手にとる戦略だ

 

また副業や兼業を認める会社も増えてきており、4月に施行された高年齢者雇用安定法の改正によって、高齢期の社員を独立させて業務委託契約を結ぶことも、企業の努力義務の選択肢となった。こうした変化の行きつく先には、そもそも何をもって就職とするのか、退職とするのかの境界線も曖昧になっていくかもしれない。

さらには、人生が長くなり変化が激しくなるこれからは、早期離職は今生の別れでもなくなっていくはずだ。企業には出戻り社員を歓迎して受け入れることも奨励したい。転職したことで、もといた会社がいかに恵まれていたかに気づけることは珍しくない。不平不満が多かった若手員が出戻ることで真摯に働くようになるかもしれない。

人も企業も変化するという視野をもっと拡げれば、転職や起業によって経験を積み、数十年後にリーダーとして戻ってくる可能性もある。日本ヒューレット・パッカードやマイクロソフト日本法人でキャリアを積んだあと、古巣のパナソニックに戻り改革に挑む樋口泰行さんなどはその先駆者だろう。

社員を他業界や他社に出向させて経験を積ませて育てる動きも出てきているが、離職者とつながっておけばそんな施策を講じずとも巡り巡って育成になることもあり得るだろう。

「早期離職=問題」とする思考の枠組みを広げるために、極端な提案もしてきたが、大切なのは、個と組織が対等に選び選ばれあうなかで共に成長していくことだ。大切な人の採用と育成に向けて新たな挑戦が増えることで、閉塞感ある働く社会に希望が灯ると信じている。

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