麻生大臣の原発処理水「飲んでも何てことはない」発言に決定的に欠けていたもの

原田 隆之 プロフィール

復興庁のゆるキャラに批判集中

麻生発言と同時期にトリチウムのゆるキャラも問題になった。これは、復興庁が処理水の安全性などをPRするポスターや動画に用いられたものである。

公開休止となったチラシより

復興庁はゆるキャラを作ったことについて、「放射線やトリチウムというテーマは専門性が高く、分かりづらいため、できるだけ多くの方に関心を持ってもらうことが必要です。それと正しい情報を知っていただくことを合わせて全体的にイラストを用いてわかりやすく解説しました」とその理由を述べている。

ここにも関係者の心情や背景を軽視した独善的で一方的な態度が指摘できる。当然の前提として、人々が処理水に不安を抱き、脅威を感じているということへの共感がない。それがあれば、不安の対象であるトリチウムをゆるキャラ化しようという発想はまず浮かばないはずだ。

ゆるキャラ化したところで、脅威であることは変わらないし、そんなことで不安が払しょくされると考えていたのであれば、人々をバカにしているのもいいところだ。これは麻生発言の「飲んでも何てことはない」という表現に通じるところがある。

批判が集中したのを受けて、復興庁はゆるキャラを用いたポスターの配布をとりやめ、PR方法を再検討するようだが、数百万かけたという税金をドブに捨てることになるのだろう。

麻生発言もゆるキャラ問題も、その根っこは同じである。いずれもエビデンスに基づいているところはたしかかもしれない。しかし、それを伝えるときに、エビデンスを振りかざしたり、子どもだましのゆるキャラを用いたりするところに、人々の価値観や心情を著しく軽視していたというところが共通しているのである。これを一言で言えば、「心がない」ということに尽きる。

エビデンスというものは、それさえ用いれば難題をいとも簡単に解決してくれる魔法の杖ではない。エビデンスという科学の力に頼るときにこそ、丁寧なコミュニケーションやきめ細やかな対応など、人間的な心配りが必要なのである。

 

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