給料が安すぎる国・日本…「賃上げ」が絶対必要なのに「賃金が上がらない」本当の理由

脇田 成 プロフィール

解決策としての「賃上げ」

そこで解決策として、賃上げの必要性が認識されるようになってきた。企業に資金が滞留している以上、(1)設備投資か(2)配当か(3)賃上げで、資金を吐き出させて有効活用する必要がある。まず配当は株式保有の少ない日本の家計(2019年の日本取引所のデータで家計他の上場企業株式の保有比率は16.5%で減少傾向)には恩恵がない。設備については、慢性的に過剰気味だ。

結局、解決策は企業から家計に資金を移すこと、つまり大幅な賃上げしかない。幸いなことに、日本の家計は給与が増えれば比例して消費を増やす行動をとってきたし、伝統的な中央集権的労使交渉メカニズムである春闘は、経済全体の賃金決定に大きな影響力を持つ。

コロナ禍までの良好な雇用情勢の下では、大企業から中小企業に賃上げは波及してゆき、人手不足から労働市場がよりタイトになれば、法や規制では影響の及びにくい格差や労働問題もよい方向に動くことが期待された。賃上げで消費が増大すれば、地方のサービス業など非製造業にも直接的に恩恵が及ぶ。さらに好況になれば、財政支出増大の必要性が減り、政府の赤字までが減少する効果を持つと期待されたのである。

 

賃金停滞の3要因

以上で述べたように、賃金停滞の主要因は、

[1] 「過去」の不良債権問題の後遺症である内部留保

であると筆者は捉えている。しかし、それだけなら賃上げはもう少し達成されても良さそうである。現状では以下の2つの問題が、賃金上昇を妨げている。それは、

[2] 「現在」進行中の人口減少
[3] 「未来」の技術革新

である。

賃金停滞の「現在」の要因は人口減少だ。コロナ禍でも認識されたように、非製造業、なかでも対人サービス業は雇用吸収力が強い。問題は非製造業に対する需要は、地域の人口の「頭数」に依存することである。バス事業やスーパーマーケット事業が人口減少のもとで、成り立たなくなれば、企業は新卒採用や年功賃金を放棄し、高齢者の再雇用で最低限の業務をこなしてゆくようになる。そうなれば賃上げどころではない。

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