給料が安すぎる国・日本…「賃上げ」が絶対必要なのに「賃金が上がらない」本当の理由

脇田 成 プロフィール

ここで付け加えておくと、実は賃上げの議論には対象が2つある。政府が毎年7月頃決める(a)公定最低賃金を巡るものと、春闘中心の(b)平均賃金を巡るものだ。筆者のこれまでの議論は後者を念頭においているが、政府が決める最低賃金も、その水準を巡って議論になることが多い。

最低賃金は地方のスーパーマーケットのパートタイマーなど、地域に定着的な労働者が受け取っていることが多い。もちろん最低賃金がマクロ経済全体の好調を反映して、結果的に上昇してほしいとは思う。しかし最低賃金を人為的にあげればすむ問題ではなく、地方の問題はまずは強力な人口減少対策で、大きな方向付けが必要だ。

 

技術革新の加速化という問題

さて、賃金停滞の「将来」「未来」の要因は、技術革新の加速化だ。新技術には、生産性向上が期待されがちだが、技術発展の結果、諸国で社会の分断が問題になっていることは周知の通りだ。

エクセル導入後に「そろばん名人(あくまで比喩である)」の中高年労働者をどう処遇するか、という問題をイメージしてもらえばわかりやすいかもしれない。そろばん技能をいくら向上させても、エクセルの速度には追いつかない。一方で、技術は古くなったものの企業に貢献してきた熟練労働者の首は切りにくい。このため職場では緊張が高まり、中高年労働者を解雇しやすくするための外堀を埋めるスローガンが鳴り響く。

もっとも、それでも雇用といった側面から考えると、日本の現状はまだましなのだろう。技術構造が大幅に変化したならば労働分配率は大きく変化するはずだが、分配率が急速に低下しつつある米国と異なり、日本のそれは国民経済計算で見る限り、下げ止まっている。現状でもまだ人間が介在する余地の大きい「手作業」が確保されているということだろうが、今後、さらにクラウド化が進み、全自動化されると、ますます人手はいらなくなるだろう。

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