給料が安すぎる国・日本…「賃上げ」が絶対必要なのに「賃金が上がらない」本当の理由

脇田 成 プロフィール

アメリカで起きている「転換」

結局ITは、経済面では、それを使いこなす人と使わない人の収入格差を激しく大きくしてしまうわけだ。こうした賃上げの停滞と格差の拡大を受け、そうした「負の側面」を解消しようとする動きも、国際的には見られる。

米国バイデン政権は起用人財の顔ぶれを見れば、巨大IT企業への対決威勢を明瞭にしており、イエレン財務長官は世界的な法人増税を提唱している。これらに象徴されるように、現在は大きな転換期にある。この30年、各国の経済政策はITというものの波及効果(「外部性」という)を重視し、企業活動を補助し放任して、経済成長を促進してきた。言わば様子を見てきたのである。

 

しかしデメリットがメリットを上回る状況も出てきた。IBMやマイクロソフトが独占禁止法の槍玉に挙がった歴史もある。日本も、巨大企業をどう制御し、その巨大利潤をどう使うか、より選択肢を広くとって大きく考えるべきだ。

日本の場合、図3に示されるように、法人企業統計で税引き前純利益と法人税他を見ると、法人税率を引き下げてきたアベノミクス下で両者が大きく乖離してきたことがわかる。つまり、利益に対して支払う税金が少なくなっているということだ。


【図3】拡大画像表示

特に2018〜2019年で、法人税他は20兆円を少し下回るが、税引き前純利益は80兆円以上である。2000年代の税率では税引き前純利益の1/3プラス5兆円が法人税他に対応すると計算できるので、80兆円も利益があれば、税収は30兆円を軽く超える。

これまでは米国トランプ政権など世界各国が法人減税を進める中で日本一国だけ逆行できない事情もあったものの、財政悪化の代表的指標であるプライマリーバランスで言えば、アベノミクス期は10~15兆円程度の赤字で済んでいたことを考慮すると、法人減税がなければ充分、政府目標値を達成可能だった、もしくは消費増税が必要なかったことを認識しておきたい。

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