2.5次元舞台レビュー+インタビューをまとめた『2・5次元クロニクル2017-2020 合わせ鏡のプラネタリウム』(筑摩書房)を上梓した、文筆家の上田麻由子さん。なぜ彼女は2.5次元の世界に惹かれたのか、なぜ「推しごと」にし続けているのかーー。
その理由を、2.5次元の魅力とともに綴っていただいた。
生身の人間がキャラクターになる、ということ
「あなたのおしごとは何ですか」と問われたら、どう答えるだろうか。ここで聞かれているのは職業ではない。いま何に夢中になっているか――つまりは「推しごと」だ。
去年秋、宇佐見りん『推し、燃ゆ』が第164回芥川賞を受賞したこともあり、「推し」という言葉は以前にもまして市民権を得た。誰かの「ファン」というときに比べて、「推す」という言葉は相手を積極的に知り、ときにその魅力を大勢の人に広めようとする能動的な行為のほうに重きを置いている感じがする。
この言葉のもとになったアイドル「推し」だけでなく、森羅万象あらゆる「推し」ごとがあるなかで、筆者の「推し」は「2.5次元」、つまり漫画やアニメ・ゲームを原作にした舞台やミュージカル全般だ。いったい、生身の人間がキャラクターになるとはどういうことなのか。
「原作」である漫画を読んだりアニメを観たりしたときに抱いたイメージそのまんまのキャラクターが、舞台上にあらわれる。あるいは、イメージとは少し違っても「原作」キャラクターのこれまで気づかなかった新たな魅力を教えてくれる。「2.5次元」舞台というジャンルがここまで人気になった理由は、漫画やアニメ、そのキャラクターをとことん研究し、愛し、解釈し、その魅力をあますことなく伝えるスペシャリストである「2.5次元俳優」と呼ばれる人たちがいたおかげだ。