デジタル庁法案を審議する国会の驚くべき「非デジタル化」度
テレワークができず審議ストップもオンライン会議可能な部屋は参議院に1つ
デジタル庁を9月1日に新設する「デジタル庁設置法案」はすでに衆議院を通過、5月中にも参議院で可決され成立する見通しだ。日本政府のDX(デジタル・トランスフォーメーション)化を進める菅義偉首相肝いりのプロジェクトだが、それを審議している国会自身の「非デジタル化」度は目を覆うばかりだ。

「英国議会からオンライン審議の参考人として要請されたので事務局に聞いてみたら、オンライン会議ができる部屋は参議院に1つあるだけで、衆議院はゼロという話でした。参議院の部屋は埋まっていたので、自民党本部に唯一あったオンライン会議設備のある部屋を利用しました」
厚生労働大臣を務めた塩崎恭久衆議院議員はこう語る。国会自身のデジタル化の遅れを痛感しているひとりだ。
新型コロナウイルスの蔓延で国会のある東京には3度目の緊急事態宣言が出されたが、期限の11日以降も延長された場合、国会議員はどう行動するのか。
秋までには衆議院総選挙があるため、連休中は選挙区に帰った議員が多い。小池百合子都知事が「東京には来ないでください」と呼びかける中で、国会審議のためには全国から議員が集まってくるという事態になりかねない。
なぜなら、国会にはテレワークをできる設備どころか、制度がまったく整備されていないからだ。
本会議はおろか、委員会すらオンラインで出席することはできないし、ましてや採決を遠隔地から行う仕組みはない。参議院の本会議場は押しボタンで投票できる仕組みは導入されているが、衆議院はいまだに紙に書いて正面の演壇の投票箱まで投票に行く明治以来の仕組みが続いている。よくテレビ中継で見る光景である。
「新型コロナより強烈なウイルスが蔓延するような事があった場合、議員が物理的に集まれず、国会の機能が止まってしまうことも考えられます」と塩崎議員は言う。