「ゴーン事件」とは一体何だったのか…検察を使ったカリスマ経営者追放の吉凶

公判大詰めの今、知っておきたいこと

カルロス・ゴーン元日産会長が、巨額役員報酬を開示していなかったとして金融商品取引法違反罪に問われた事件の公判が、大詰めを迎えている。

ゴーン被告は逃亡、共犯のグレッグ・ケリー元代表取締役が主役となった公判は、5月11日、ケリー被告の弁護側によってゴーン被告の供述調書が読み上げられ、翌12日、ケリー被告が法廷に立つ。

調書という形にせよ、ゴーン被告の“肉声”が伝えられるのは初めて。また、昨年9月に始まった公判は、隔週で火曜日から金曜日の4日間連続のハイペースで76回の期日が予定され、これまでに司法取引に応じた大沼敏明・元秘書室長とハリ・ナダ専務執行役員、小枝至・元相談役名誉会長、川口均元副社長、西川広人元社長などが尋問を受けており、いよいよケリー被告の番だ。

 

そのタイミングで『証言・終わらない日産ゴーン事件』(光文社)が上梓された。著者は産経新聞社会部記者としてゴーン事件を追い続けた市岡豊大氏。ケリー被告への12時間インタビューをもとに、仏ルノー、日産と三菱自動車を牽引してきたカリスマ経営者が引き起こした事件の真相に迫る。

ケリー被告とはどんな人物か

検察の視点を入れたゴーン事件の全体像は、逮捕の瞬間をスクープした朝日新聞取材班による『ゴーンショック』(幻冬舎)に詳しく、ゴーン被告の言い分は、インタビューを重ねた郷原信郎弁護士が『「深層」カルロス・ゴーンとの対話』(小学館)で、かなり伝えている。

だが、黒衣だっただけにケリー被告の情報は乏しく、裁判の行方を判断するうえにおいても、ゴーン事件の真相に迫るためにも、ケリー被告の事件への関わり方はもちろん、その人柄と個性を掌握する必要がある。

 

どんな人物か――。

「逃げない人です。聞かれたことには正面から答える。もちろん話さないことはあるでしょうが、言っていることは信用できます。そして弁護士として、人としてプライドが高い。無罪主張を貫くのは、「間違ったことはしていない」という思いであり、日本に留め置かれているつらさは、毎回、傍聴に来ている夫人を始め家族が支えているようです」(市岡氏)

18年11月のゴーン、ケリー両被告の電撃逮捕から2年半が経過した。19年12月にゴーン被告がレバノンに逃亡。それでも20年9月に公判が始まって、これまでかなりのことがわかってきた。

カリスマ経営者の会社を私物化した不正の数々が元監査役の調査によって判明。怒りを共有、同時にルノーへの統合を恐れた幹部らが検察に相談。特捜部の復権と司法取引の実績をあげたい検察がそれに乗り、ハリ・ナダ、大沼の両氏を取り込んで捜査着手。自動車大手が「外資」となる危険性を排除したい官邸が側面支援した――。

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