相応しい言葉を選ぶならば、衝撃。

吉川ひなのさんの初エッセイ『わたしが幸せになるまで 豊かな人生の見つけ方』(幻冬舎)の発売に先駆け、期間限定でエッセイの冒頭部分が公開されるとSNSをはじめネット上では発売前にもかかわらず大きな反響を呼んだ。

冒頭に綴られたのは、ひなのさんの生い立ち、13歳からスタートした輝かしいキャリアの裏側にあった“搾取”と言っても過言ではない日々、そして血のつながりから逃れられずに葛藤しつづけた行き場のない心。

本書は当初、ライフスタイルや独自の子育てなど実用書に近いイメージを予定していたエッセイだったという。にもかかわらず、生い立ちを語り、過去を赤裸々に振り返ったひなのさん。そこには、真っ直ぐに生きる彼女らしいとても誠実な理由があった。

過去を語るのは自然な流れだった

「最初はあくまで“今の私”の生活や“今のタイミング”で私が思うこと、考えていることを知ってもらいたいと思ってスタートしました。フォーカスするのは今であって過去ではない。でも、書き進めていくうちに、伝えたいことだけを届けるよりも先に、まずは私という人間がどんな人間であるかを知ってもらう必要があると思ったんですね。きちんと自分のことをお話ししよう、と決めて、公開されている冒頭部分を書き上げました。

提供/幻冬舎
 

私がどう育ったかを話したこともなかったし、たぶんほとんどの人の想像とはかけ離れたものだったと思います。昔の私は事実を曖昧にすることがすごく上手だったと思う。当時は自分の中でも消化されてないから、心を守るためにも曖昧にしておくほうがちょうどよかった。でも、今の私は曖昧にしておくというスキルがすっかりなくなってしまって、曖昧にしないとしたら嘘をつくしかない。でも、嘘はつけない。

本に書いたことはごく一部で本当に大変だったし、私の人生は色んなことがいびつだったと思う。でも、書き終えたときに、『もう過去を話せるようになったんだ、私』と気づくことができました。私、もう大丈夫なんだなって。過去を消化できずに、しんどい時期だったらきっと書けなかったから。よく巷でいわれる“神様は乗り越えられる試練しか与えない”とか“経験は無駄じゃない”って言葉があるじゃないですか。昔の私には何ひとつ響かなかったけれど、今ならその言葉の意味をちゃんと噛み締められる。

原稿はひとつひとつ書き上げるたびに、『あぁ、気持ちいい!』という感じで。書き終わったら担当編集の木田さんに原稿を送って、すぐに感想をいただけるのもうれしくて。ただただ楽しかったです。自分の伝えたいことだけを自由に書いていいなんて気持ちいい以外のなにものでもなかった」