2021.05.11

小・中学生の女子はなぜ「うち」という一人称を使うのか? その深すぎる理由

彼女たちが抱えている「ジレンマ」
中村 桃子 プロフィール

女子が「ぼく・きみ」を使うのはけしからんという批判は、明治から昭和を通して見つけることができる。

女性教育家の巌本義治は、明治23(1890)年に『女学雑誌』に掲載した「女性の言葉つき」の中で、女子学生が「君」や「僕」を使っていることを批判している。

国語学者の保科孝一は、1942年の『大東亜共栄圏と国語政策』の中で、「近来学生の用いる人代名詞「君」や「僕」を、女学生の間でも用いるものがあるようですが、これは一種の変態でありまして、わが国においては、男子と女子との間に、その用法が厳重に区別されているのが常例であります」と、これまた、女子学生が用いる「ぼく・きみ」を批判している。

さらに、このような批判は、戦後から現代まで続いている。批判があるということは、いつの時代も「ぼく・きみ」を使う女子がいたということだ。

 

注目すべきは「少女期」

日本の女子が、明治時代からずっと「ぼく・きみ」を使ってきたのならば、女子による男子の自称詞使用は、各々の時代から影響を受けているというよりも、特定の年齢に普遍的に起こっている現象だと言える。

だとしたら、考えるべきは、「少女期」という、女子が子供から大人になる時期である。

幼児期には、自分の名前や愛称を使う子どもが多い。ところが、小学校に入学する頃には、「わたし」(女子の場合)と「ぼく」(男子の場合)に変えるように指導される。ためしに、2015年から2020年まで使われた小学校一年生の国語教科書を見てみると、どの教科書でも、登場する女子は「わたし」を使い、男子は「ぼく」を使っている。

ところが、名前や愛称から「わたし・ぼく」に至る距離が男女で異なる。

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