「推しの愛読書」きっかけからハマる人が多数
コロナ禍でも、店内には何組かのお客さんがいた。みなソーシャルディスタンスを取りながら、本を手に取り、マスク越しに互いにすすめあいながら、談笑している。
「そうなんだ、じゃあこれ買ってみようかな」「この本もね、結構おもしろいよ」これは、韓国書籍を扱う神保町の書店「CHEKCCORI(チェッコリ)」のある日の様子だ。
この数年、韓国関連の書籍の出版が相次いでいる。
『82年生まれ、キム・ジヨン』『アーモンド』などの文学作品、『私は私のままで生きることにした』『死にたいけどトッポッキは食べたい』といったエッセイなど、ベストセラーも続々と生まれている。店頭に韓国書籍コーナーを設ける書店も増えてきた。
「BTSセラー」という言葉があるのをご存じだろうか。
BTSのメンバーが読んだことがきっかけでヒットにつながった本のことだ。BTSの楽曲やMVには、小説や詩がモチーフとして使用されている。『車輪の下』『ライ麦畑でつかまえて』などの古典的な名作小説、マレイ・スタインの『ユング 心の地図』などが挙げられる。
上記の作品以外にも彼らが読んだと言われる作品は、ネットで話題になり、ファンの間で拡散されベストセラーになるのだ。BTSに限らず、ほかのK-POPアイドルや人気ドラマの俳優が読んだことで話題になった本も多い。日本翻訳版の帯には、K-POPアイドルや人気俳優の愛読書と謳われているものもかなり出版されている
「推しが読んでいる本を私も読みたい」
しかし、それは手に取るきっかけにすぎない。
ひとたび本を開けば、力強いストレートな言葉、自分を肯定するメッセージ、新しい価値観の提示、とすぐに引き込まれるものばかりだ。たしかに、最初はK-POPファンが手に取ったのかもしれないが、口コミなどで魅力が広がっていき、ヒットにつながる。
BTSのメンバーが読んでいるというということで話題になった『私は私のままで生きることにした』という作品も、日韓累計158万部、日本でも50万部を突破するベストセラーとなった。ファンが手に取ったということもあるだろうが、この数字はそれだけとはいい難く、読者層の広がりを確実に感じるのだ。