言葉の暴力や態度による嫌がらせなど、精神的な暴力のことを「モラル・ハラスメント」という。なかでも家庭内モラハラは閉じられた空間ゆえに、自分が被害者だと自覚できないケースも多々ある。漫画家の榎本まみさんは、そうしたモラハラ夫から逃げ出すことに成功した妻たちと専門家に徹底取材を行い、漫画『モラニゲ モラハラ夫から逃げた妻たち』にて、その実態を取り上げている。
記事前編では、韓国人男性と結婚し、韓国に移住したところ、一家全員からモラハラを受けたという、さくらさんのケースを紹介した。モラハラ夫を作り上げた、家族の恐るべき「支配構造」とは――。
※本記事に書かれている内容はあくまで個人の体験を取材したもので、特定の個人、コミュニティ、国、文化などを貶めるものではありません
いじめを誰もおかしいと思っていない
さくらさんの夫の家族構成は、義理の母、義理の姉、義理の兄夫婦(兄嫁は日本人)、そして夫というものだった。そこでは、力関係が上から順に強く、いじめが上から下に行われていたという。

「その力関係といじめを誰もおかしいと思っていないみたいで…。少し前まで義理の父が生きていたんですが、平気で一日洗ってない足を『くさいだろー!』と言いながら義母の顔に押し付けてなめるように言う人でした」
義母は義理の姉と義理の兄夫婦をいじめて、義理の兄夫婦が夫とさくらさんをいじめる。そんな構造ができていた。