2021.05.27
# 相対性理論

微分は「わかったつもり」になって進もう…ド文系が挑む「アインシュタイン方程式」

アインシュタイン方程式を読む 第6回
ベストセラーとなった科学書の編集を何冊も手がけてきたライターの深川峻太郎さんが一般相対性理論の“数式”へと挑んだ話題作『アインシュタイン方程式を読んだら「宇宙」が見えた』。そのプロローグと第1章を、全6回の短期連載で特別公開いたします。

「登山前の準備」として特殊相対性理論に取り組み始めた深川さん。頼りになるシェルパ「しょーた君」といっしょに、まずは「異なる慣性系であっても、運動の法則が同じになる」というガリレオの相対性原理を数式で理解することを目指します。

前回、ニュートンの運動方程式に「ガリレイ変換」を行うことになったのですが、そこで登場したのが「微分」です。微分を一から学んでいては時間がいくらあってもたりません。ここでは、ごくごく簡単に微分を「わかったつもり」になって進みましょう。

連載を初めから読むにはこちら

深川峻太郎
ライター、編集業。1964年北海道生まれ。2002年に『キャプテン翼 勝利学』(集英社文庫)でデビュー。『月刊サッカーズ』(フロムワン)、『わしズム』(幻冬舎、小学館)、『SAPIO』(小学館)などで時事コラムを連載。本名(岡田仁志)では著書に『闇の中の翼たち ブラインドサッカー日本代表の苦闘』(幻冬舎)があるほか、フリーの編集スタッフとして手がけた書籍は200点を超える。

「d」がついたら「瞬間的な変化量」のこと

そこで私はブルーバックスの『マンガ「解析学」超入門──微分積分の本質を理解する』(ラリー・ゴニック/鍵本聡・坪井美佐=訳)を開いてみた。それによると、古代ギリシャの哲学者ゼノンは、物体の運動が「不可能だ」と考えたという。急に何を言い出すんだおまえは。

ゼノンの言い分はこうだ。運動とは「時間にともなう位置の変化」のことだ。ところが、運動のある瞬間をとらえると位置の変化は起きていない。瞬間とは、たとえばマストから落下する途中の石を写真に撮ったような状態のことだ。たしかに、ある瞬間をとらえた写真の石は止まっている。つまり、位置が変化しない。

そして、ゼノンによれば時間とは「瞬間の連続」であり、いずれの瞬間にも運動は起きていない(位置が変化していない)のだから、(ゼロをいくら足してもゼロなのと同じように)瞬間をいくらつなげても位置は変化しない、つまり運動は不可能なのであーる!

エレノアのゼノン

ゼノンさんは、こんな屁理屈ばかり考えていたらしい。アキレスと亀のパラドックスを考え出したのもこの人だ。後ろから追いかけるアキレスが亀のいた地点に到達したとき、亀はその時間分だけ前進している。次にその地点まで到達しても、やっぱり亀はアキレスより前。したがって、どんなにアキレスが俊足を飛ばしても永遠に亀に追いつけない。「んなアホな」と笑い飛ばすのは簡単だが、ちゃんと反論しろと言われると困る。もしかしたら、私が原稿をどんなに急いで書いても〆切に間に合わないのも、最後の1行がちょっとずつ前進しているからではないかと思えてくるぐらいだ。

さて、ゼノンさんの屁理屈からおよそ2000年後に、2人の男が同時期に同じようなことを考え出した。イギリスのアイザック・ニュートンさんと、ドイツのゴットフリート・ライプニッツさんだ。彼らは、こう考えた。運動する物体は、ある瞬間にはたしかに移動していないが、それでも「運動を示す何か」を持っている。だから、たとえ位置の変化はなくても「運動」をしていると見なせる、というわけだ。

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