名前が前に出てしまう分、自分も前に出ないと
プレッシャーに緊張感に責任感。人間が、何か大きな物事を成し遂げようとするとき、それらの“負荷”はつきものだ。でも、それらに打ち勝っていくことで、人は間違いなく成長できる。TBS赤坂ACTシアターで21日から上演されるミュージカル『ロミオ&ジュリエット』で甲斐翔真さんとダブルキャストでロミオ役を演じる黒羽麻璃央さんは、仙台で過ごした少年時代、“華やかな名前に負けない自分でいること”が、自分を奮い立たせる一つの原動力になっていたという。
「黒羽麻璃央という名前がそもそも目立つので(笑)、物心ついた頃から、クラス委員やら何やら、いろんな役割を任されることが多かったんです。先生もクラスメイトも、僕の名前はすぐ覚えてしまうし、僕自身もそんなに引っ込み思案な方ではなかったので、教室のすみで静かにしているとかができなくて。名前が前に出てしまっている分、ちゃんと自分も前に出ないと、って。名前負けしないように、子供ながらに頑張って生きていた。そうしたら、いつの間にかクラスでも部活でも、周りを引っ張っていくことが好きな性格になっていました。少しずつですが、自然に名前に中身が追いついたんです(笑)」
子供の頃は野球少年。でも、歌って踊るアイドルにも憧れた。中学生の時、東京の芸能プロダクションの研修制度に応募しようと考えたこともあったが、仙台で生まれ育った彼にしてみれば、たとえ合格したところで、上京できる保証はなかった。
「親からは、『本気でやりたいなら応援するけれど、今は野球もあるし、今一番やりたいのはどっちなのか考えてからにしなさい』と言われ、そのときは野球が好きだったので、野球を取りました」
高校生になってから、怪我で野球を諦めなければならなくなった。熱中できるものもなく、バイトをしたり、仲間とバンドを組んだりして、いわゆる“アオハル”を楽しんでいた頃、友人に「ジュノン・スーパーボーイ・コンテストに応募してみれば?」と言われ、思い出作りにと思い応募。準グランプリを受賞する。

2010年第23回ジュノン・スーパーボーイ・コンテストで準グランプリを受賞。12年にミュージカル『テニスの王子様』2ndシーズンで俳優デビュー。以降、ミュージカル、ストレートプレイを問わず、舞台に多数出演。近年は、映画・ドラマ・バラエティにも進出。20年には情報番組『ヒルナンデス!』のシーズンレギュラーも務めた。近年の出演作に、映画『恐怖人形』『いなくなれ、群青』(ともに19年)、ドラマ『小山内三兄弟シリーズ』(19・NTV)『恋はつづくよどこまでも』(20年・TBS)『まだまだ恋はつづくよどこまでも』(20年・Paravi)『SUITS/スーツ2』(20年・CX)、舞台『秒速5センチメートル』(20年)、『エリザベート』『るろうに剣心 京都編』(ともに新型コロナウイルスにより公演中止)など。
配信中のParaviオリジナルストーリー「リコハイ‼」に出演中。7/20には自身が企画プロデュースしたイベント「ACTORS LEAGUE 2021」が開催予定。
心が汗をかいたとき、身体中を電流が走った
「高校を卒業して上京したときは、10年後の自分がまさかミュージカルで、しかもこんな大役をいただけるようになるなんて、まったく想像していなかったです」と彼は言うが、黒羽さんが、歌って踊って芝居もするミュージカル的なスキルを培った現場は、いわゆる2・5次元と言われる作品だった。ミュージカル『テニスの王子様』2ndシーズン、ミュージカル『刀剣乱舞』シリーズ、『黒子のバスケ』など、日本オリジナルの群像劇を扱った作品で実績を詰んだ。
「歌うことは、子供の頃から、好きでした。上手い下手は別として(笑)。でも、それが仕事になってからは、歌もダンスも芝居も、初めは何一つうまくできなくて、コンプレックスだらけでした。スキルに関しては、今でもそのコンプレックスを克服するまでには至ってないです。ただ、お芝居そのものは、なんていうか……ビリビリと電流が走るような、痺れる面白さを感じたことがあるんです。
5年前、宅間孝行さん率いるタクフェスという演劇プロジェクトの『歌姫』という舞台に出演させていただいて、その時、いわゆる“演劇人”の方達から、すごく刺激的な指導を受けることができました。なんだろな……言葉の選び方が下手くそなんですけど、体だけじゃなくて心も、すごく汗をかけてる感じがしたんです」