誰もが愛に飢えていると思う
2001年にパリで初演されたミュージカル『ロミオ&ジュリエット』は、2011年に小池修一郎さんによって潤色・演出され、東京と大阪で上演された。当時のロミオ役は城田優さんと山崎育三郎さんのダブルキャスト。当時、ベンヴォーリオ役で出演していた浦井健治さんは、「あの『ロミオ&ジュリエット』が日本のミュージカルの歴史を変えた」と語っていたこともある。人気のナンバー「世界の王」は、ミュージカル俳優が自身のソロコンサートなどで披露することも多い。その「歴史を変えた」初演から10年が経った。10年前はまさか自分がロミオ役を演じるなど想像していなかったという黒羽さんは、では、どんなところにこの作品の魅力を感じているのだろうか。
「どんなに表面的に穏やかに見える世の中であっても、今を生きている一人一人は誰もが愛に飢えていると思うんです。コロナ禍のような、不穏な空気が世間を覆い尽くしている今は、なおさら人が人を求める気持ちが強くなっていると思う。対立する両家の子供たちが、周囲の反対にもめげずにお互いを求め合うという、引き裂かれるほどに相手に惹かれてしまう悲劇的なラブストーリーの典型ですが、2人が現世で結ばれなかったから悲劇、というわけでもないと僕は思うんです。
最後にはロミオもジュリエットも死んでしまいますが、2人の犠牲の後には両家の和解が待っていて、ヴェローナの街には平和が訪れる。ある意味、本気で自分の意思を貫こうとしたら、死ぬかもしれないぐらいの覚悟が必要なのかもしれないし、そのぐらいの本気が描かれているところは、同じ人間として『本気で生きろ!』と鼓舞されているようでもあるし、そのアツさに共感する部分もあります。あとはやっぱり、愛の伝え方がストレート(笑)。恥ずかしいくらいの潔さですよね。真っ直ぐすぎる感情はカッコ悪いとされがちな現代ですけど、やっぱり、愛を感じたら素直に『愛してる』というべきだと、ロミオを演じていると思ってしまいますね」
「シェイクスピアって、出てくる言葉が難しいし、比喩が独特なので感情移入しにくい。時代背景もわかりづらいし」などの理由で二の足を踏んでいる人には、「こんなにエンタテインメント性の高いシェイクスピア劇はなかなかないです」と力説する。
