すみません、多分僕、重い男です(笑)
「とにかく音楽もダンスもセットも豪華なので、ミュージカル初心者にはもってこいだと思います。仮面舞踏会のシーンは、テーマパークみたいな華やかさですし、物語だってシンプルといえばシンプルです。対立する両家の男女が恋に落ちたことから始まり、若者同士の諍いの中で、ジュリエットの従兄弟がロミオの親友を殺してしまい、逆上したロミオがその従兄弟を殺す。ロミオは街から追放され、残されたジュリエットはなんとかロミオとの愛を成就させようと神父の力を借りることにしたけれど、さまざまなすれ違いが重なって、二人は死を選ぶことになってしまう。でも、その一途さに、みている人はきっと恋をしたくなると思うんです。このくらい愛情を注げる人が欲しい、と。
実際、僕自身が、愛情は重くないと価値がないと思っていて……。僕がもし障害を乗り越えないと愛を貫けないような女性を好きになったら? それでも、好きだと思ったら、その気持ちはちゃんと相手に伝えると思います。障害を乗り越えようと必死になると思います。だからすみません、多分僕、重い男です(笑)」

3年前、小池先生と初めて顔を合わせたとき、かけられた言葉が忘れられない。「ミュージカルのメインキャストを演じるのは、歌が歌えて踊りが踊れて、見た目もよい人でなければならない。神様に選ばれた人間しかできない仕事なのだから、誇りを持ってやりなさい」と小池先生は言ったそうだ。
「人間の肉体表現のすべてが詰まっていて、演者のさまざまな技量を問われる総合エンタテインメントがミュージカル。本当に僕の好きなタイプのプレッシャーがたくさん詰まっていて、ワクワクしますし、ヒリヒリもします。ただ僕、将来的には“演劇人”と呼ばれる俳優になりたいんです。映像も好きですし、ミュージカルも大好きなんですが、深く深く掘り下げていきたいのは、演劇というジャンルそのもの。なんて……『タクフェス』以来、ただ“演劇人”という言葉のカッコよさに取り憑かれてしまっただけかもしれないですけど」
繊細なように見えて、発言は骨太。そして、演劇人を目指すだけあって、言葉に対する感度も高い。撮影のとき、フォトグラファーが何気なく「小顔ですね」と声をかけると、ちょっと複雑な顔をして、「“小顔ですね”って言われると、なんて返したらいいのか。うまい言葉が見つからなくて、いつも黙っちゃうんですよ」と呟いた。
「『カッコいいですね』だったら『そんなことないです』って言えるんですが、『小顔ですね』って言われて、『そんなことないです』って否定するのもおかしいし。褒めてもらっていることはわかるんですが、『ありがとうございます』も変だし(笑)。だって、『背高いですね』って言われて、『ありがとうございます』とは答えないじゃないですか」
黒羽麻璃央という華やかな名前に恥じないアツさ、リーダーシップ、努力を伴うスキルなどを兼ね備えながら、そんなふとした発言に、28歳らしい普通っぽさと謙虚さが滲んだ。

2001年、フランス人演出家ジェラール・プレスギュルヴィックの手によりフランスで誕生、世界20ヵ国以上で600万人を動員したミュージカルは、日本では稀代のヒットメーカー・小池修一郎に潤色・演出され2010年宝塚歌劇団によって初演。その大反響を追い風に翌年日本オリジナル版として新たに誕生した。上演のたびにキャスティングが大きな注目を集めた本作は、2019年以来、2年ぶりの上演となる今年、記念すべき10周年を迎える。ライジングスターによる最旬のロミオ&ジュリエット。ロミオ役は黒羽麻璃央と甲斐翔真、ジュリエットには、伊原六花と天翔愛のWキャスト。
[大阪公演]7月3日(土)〜11日(日)梅田芸術劇場メインホール
[名古屋公演]7月17日(土)〜18日(日)愛知県芸術劇場 大ホール
[公式サイト]www.rj-2021.com
ヘアメイク/Haruka(Lomalia) スタイリング/ホカリキュウ