2021.05.30
# エンタメ

やっぱりSMAPはスゴかった…男性アイドル史から見えてくる「その画期的な成功」

飯田 一史 プロフィール

「王子様」「不良」、そして「普通」

——太田さんは男性アイドルには大きく分けて「王子様」と「不良」という2系統が存在する、という見立てを採用しています。少し抽象化すると「王子様」「不良」に受け手側はどんなことを求めていると捉えればいいでしょうか。

太田 今回の本では、宝塚を参照してジャニーズが示した「王子様」に対して「不良」のGS(グループサウンズ)が登場する1960年代を起点としましたが、「王子様」と「不良」はそれ以前から映画や小説、マンガといった物語の中に登場していた、女性が憧れる男性のタイプの両極です。

 

——「王子様」「不良」に、80年代のたのきんトリオで萌芽を見せ90年代にSMAPが確立した「普通」が加わる、とされています。本当にただの普通の人であればアイドルとして支持されないわけですが、そこで言う「普通」はどういうニュアンスでしょうか。

太田 今でもキラキラした浮世離れした「王子様」タイプを好む人もいれば、ワイルドな「不良」タイプが好きという人もいますが、それらを包み込むようなかたちで出てきたのが「普通」です。

SMAPを例に取ると、80年代までは王子様や不良という類型に沿った振る舞いをしないとアイドルとして認めてもらえなかった。ところが木村拓哉さんが出てきたときには、彼はトーク番組で性的な話題を振られてもあっけらかんと対応していった。それは当時「アイドルがそんなこと言っちゃうんだ!」という型破りの衝撃があった。しかしファンもそれを認め、歓迎した。従来のアイドルのイメージには沿わない本音や「素」をつまびらかにし、ひとりの個人として自己を表現することも魅力として発見された。おそらくそこには平成に入り、前述したような日本社会の機能不全や停滞を原因として、取り繕ってはいられない状況になったことが時代背景にある。アイドルに限らず、もはや決まり切ったレールに乗り、定型を演じていればいい時代ではなく、それぞれが個人として自立した生き方が必要であり、いかに自分を表現していくかが重要だと言われるようになりました。これはSNS時代に入っても引き継がれている感覚ですが、その始まりは平成にありました。

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