LGBTQめぐる自民議員の発言は「“無知が招く恐ろしさ”の象徴」 オリパラ組織委理事が直言

性別や性的指向(恋愛や性愛がどのような対象に向かうのか)にもとづく差別をなくし、多様性を認める社会を目指すための法案に関する議論が行われている。現在、自民党で審査が行われているのは、超党派の議員連盟による「理解増進」に主眼を置く法案だ。

この法案は、多様性と調和を掲げる東京2020大会を前に議論が急速に進んだとされる。だとすれば、差別をなくすために「理解増進」は必要なステップだが、今の日本にはその先に進められる状況は整いつつあり、法律を作るならば差別の解消をめざすべきだろう。そうでなければオリンピック憲章の精神には一致しないと考える。

さて法案をめぐる2021年5月19日の自民党内の会議で、自民党の山谷えり子元拉致問題担当相が「体は男だけど自分は女だから女子トイレに入れろとか、アメリカなんかでは女子陸上競技に参加してしまってダーッとメダルを取るとか、ばかげたことはいろいろ起きている」と発言したことが報じられた*1 。翌20日には、この発言について山谷議員自身が「どういう社会現象が起きるか学ぶべきだ。社会運動化、政治運動化されると副作用もあるのではないか」と述べたと報じられている*2

山谷えり子議員(photo by gettyimages)
 

山谷議員の19日の発言の問題性について、スポーツの観点から考えてみたい。

国際社会とオリンピックが発するメッセージ

オリンピック憲章には、次の一文がある。「オリンピック憲章の定める権利および自由は人種、肌の色、性別、性的指向、言語、宗教、政治的またはその他の意見、国あるいは社会的な出身、財産、出自やその他の身分などの理由による、いかなる種類の差別も受けることなく、確実に享受されなければならない。」(オリンピズムの根本原則6)*3

性別や性的指向に関わる差別について、スポーツとの関係から考えるにあたっては、この一文は国際的にも普遍的な価値を持つメッセージだといえる。

日本は、このメッセージを多くの人が共有できる好機にある。東京2020大会の開催にあたっては、IOCと東京都、JOCの三者が「開催都市契約」*4 を締結している。この契約では、開催国(日本の政府)はオリンピック憲章と開催都市契約等の遵守を誓約すること、と明記されている。

政府与党の議員として、性別および性的指向にもとづく差別を助長するような発言は、この根本原則に違反すると言わざるを得ない。東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森元会長がジェンダー平等に反する発言を行った際にも、これへの違反が問題となった。

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