たった数℃の違いが決めるオスとメス
我が家にはクサガメがいる。メスなので毎年初夏になると卵を産むが、1匹だけで飼っているので、産まれた卵が孵化することはない。
もちろんオスとメスを飼っていれば、有精卵を産む。そこからオスとメスのどちらの子ガメが生まれるかは、卵の中で胚が発生する、つまり受精卵からさまざまな器官を持つ個体が作られていく時の周囲の温度で決まるという。
クサガメと同じく、ペットとしてよく飼われているミシシッピアカミミガメでは、卵を26℃で孵化させるとオスに、31℃で孵化させるとメスになり、その間の温度ではオスとメスのどちらかになる※1, 2。
ほ乳類や鳥類では、性染色体の組み合わせなどによって性別が決まる。しかし爬虫類では、この性染色体によるしくみ以外に、発生時の周囲の温度によってオスかメスかが決まるしくみがある。
すべてのワニ、カメのほとんど、一部のトカゲでは、温度によって性別が決まることがこれまでの研究でわかっている。たとえばアメリカ南西部に生息し、オスは全長4メートルにもなるミシシッピワニの場合、温度が33℃から34℃前後で100%オスになり、それ以外の温度ではメスが多くなるという※3。

最近では、卵の中で性別が決まる時に、そうした特定の温度を感じ取る「センサー」になるタンパク質の研究など、分子レベルでのメカニズム解明も進んでいる※3。
一方で、ヘビでは温度によって性別が決まる種類は見つかっていない。