菅田将暉は何が“圧倒的に凄い”のか…「俳優の定義を拡張する存在」と言える理由

多くの「ヤバい役」を演じてきた

さらに注目すべきは、過激な作品の多さだ。

出世作のひとつである『共喰い』(2013)は、田中慎弥の芥川賞受賞作の映画化作品。セックスの際、相手に暴力をふるう父親と同じ血が流れていることを恐れる高校生の息子の物語だ。『そこのみにて光輝く』(2014)では、綾野剛演じる暗い過去を抱えた男を慕う問題児に扮した。

『ディストラクション・ベイビーズ』(2016)では、強い相手と戦うことが生きがいの男(柳楽優弥)と共に暴力で名を成そうとする、倫理観が壊れた少年を怪演。商店街で女性に襲い掛かり、殴る蹴るなど非道の限りを尽くすシーンは、衝撃的だ。

ボクサー役に挑戦した『あゝ、荒野』(2017)では、全裸で強烈なラブシーンにも体当たり。『生きてるだけで、愛。』(2018)では、追い詰められてパソコンを会社の窓から投げ捨てるなど、精神的に限界を迎えたスクープ誌の記者に扮した。

『タロウのバカ』(2019)は、暴力衝動に突き進んでしまう破滅的な青年役。金髪姿で臨んだ『溺れるナイフ』(2016)にせよ、小松菜奈演じる主人公に唾を吐きかけてからキスをする強烈なキャラクターを体現している。

このように、菅田のフィルモグラフィを見てみると、攻めた作品が多く並ぶ。激しいラブシーンや、道徳的に問題がありそうなキャラクターも難なく、果敢に挑み続けてきたのだ。

所属事務所が同じ松坂桃李にもこの傾向が見られ、中村倫也等も含めたトップコートのカラーと言えるかもしれないが、それにしたって比率が高い。

〔PHOTO〕gettyimages
 

2020年は人気ドラマ『MIU404』で悪役を演じ話題になったが、菅田の出演歴を見れば、さもありなん。もともと「ヤバい役」はお手の物だからだ。

人気シリーズ『闇金ウシジマくん Part2』(2014)での配役も、主人公のウシジマ(山田孝之)を逆恨みし、破滅させようとする元従業員。ビニール袋で顔を覆われ、窒息寸前の状態になるという危険なシーンも収められている。

過激性は薄いものの、『コントが始まる』にしても、ナチュラルにトランクス一丁になるシーンが挟まれており、このあたりのあっけらかんとした「役に必要なことをやる」姿勢は、頼もしい限り。

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