多くの人が知らない…東京五輪、定員超が応募した「スポーツドクター」の“リアル”

現場の医師が語る
世良 泰 プロフィール

そもそも東京オリ・パラで医師は何をする?

オリンピック・パラリンピックでは、観客などに対応する医務室の他にも医療従事者の仕事があります。

1つ目は実際に選手が試合を行っている場を担当する人たちです。これは各競技の医事委員(各競技団体で医事部門を担当している医療関係者)が主に行うこととなっており、選手が試合中にケガをした場合や緊急の処置が必要となった場合に対応を行います。

医師だけでなく看護師やトレーナーなど、多くの医療従事者が関係します。試合以外の練習の時からフィールドでは不測の事態が起こりうるため、競技に関することが行われている期間は常に対応できるよう準備が必要で、勤務時間も長時間になり、多くの人出が必要になります。

また各競技団体によって医事委員などのメディカル部門の人数などには大きな差があり、元々所属している医療従事者のみで対応できる場合もあれば、知人などに声をかけて医療従事者を集める団体もあります。

 

2つ目は選手村やその他宿泊施設に設置される診療所にいる医療従事者です。選手村は多くの選手が集まるため、選手村などの中に診療所が設置されます。選手村総合診療所では会場の医務室などとは異なり、医療機器も設置され、一般的に行われている診療が受けられる場所になります。

選手村(photo by gettyimages)

こちらは主に内科や整形外科を専門とする医師が担当しますが、コロナ対策により多くの人が必要になったことから、こちらも追加募集が行われました。

3つ目は主にIOCや各国の関係者に体調不良が起こった場合や、会場で救急搬送が行われることになった場合に対応する医療機関です。予め対応する医療機関は関係者や会場ごとに定められており、決まった手順で受診や搬送が行われるように調整されています。

今大会に関係する医療従事者については、医療体制も含めて数年前から準備が進められてきました。しかし昨年、1年の延期となったことで、元々参加するために予定を組んでいた人が参加できなくなってしまったり、コロナ対策をする上でより多くの医療従事者が必要になったりしたことで、今回の追加募集が行われました。そのため今のようなオリンピック直前の対応になったと考えられます。

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