警鐘が活かされていない
2019年12月24日、「ウイグル人権法案、じつは『日本企業』が他人事とはいえない可能性」でユニクロ(ファーストリテイリング)や無印良品(良品計画)が、人権問題で「名指し」されたことを述べた。
ところが、それにもかかわらず、「ユニクロ」の綿製シャツが、新疆ウイグル自治区の強制労働をめぐる米政府の輸入禁止措置に違反したとされる「事件」が起こった。米税関・国境警備局(CBP)が今年1月、ロサンゼルス港で輸入を差し止めていたことが5月10日付けの米国土安全保障省の文書で明らかになったのだ。
それに対してファーストリテイリングは5月19日に、CBPの決定は「非常に遺憾」というコメントを出した。「サプライチェーンにおいては、強制労働などの深刻な人権侵害がないことを確認。綿素材についても、生産過程で強制労働などの問題がないことが確認されたコットンのみを使用している」とのことだ。
しかし、このファーストリテイリングの対応は非常に稚拙である。1月に指摘されたのに5月まで情報を公開していなかったのは「僕は悪くないもん……」という考えからだと思われるが、最大の問題は柳井正氏率いるファーストリテイリングが「国際情勢」に疎い「世界の田舎者」であることだ。
重要なのは「世界の流れが変わった」=「ゲームチェンジ」したことである。5月29日公開の「バイデン政権がすでに『深刻な機能不全』…このまま終わるのだろうか」でも述べたように、バイデン政権がどのような考えであろうと「米国の真意」は、すでに共産主義中国を冷戦時代のソ連と同じように「悪の帝国」とみなしている。「天井の無いアウシュビッツ」と呼ばれるウイグル問題を抱えるから、ナチスドイツと同じ「人類の敵」と扱われている可能性もある。
だから、このような相手との取引には「疑わしきは罰せず」の民主社会の原理は適用されない。「疑わしきはすべて罰せられる」対応をされるということについて、ファーストリテイリングを始めとする日本企業は全く理解していないように思える。
しかも、綿そのものには製造番号やタグなどはついていない。見た目ではまったく区別がつかないのだ。DNA鑑定である程度の産地を絞れるとの話もあるが、ファーストリテイリングはそこまで踏み込んだのだろうか?
どのような「確認方法」なのかは分からないが、「悪の帝国(人類の敵)である中国」が証明した内容など意味がないというのが米国の立場だと肝に銘じるべきである。