水面下に潜む「新たな分断」
ほかにも「接種済み側」と「未接種側」の格差や分断は広がっている。
テレビ局のトーク番組「トゥナイトショー」(NBC)と「レイトショー」(CBS)は共に、6月よりスタジオでの公開放送の再開を発表した。
これらは長寿番組でファンの期待も大きいが、再開後に観覧できるのは「ワクチン接種完了者のみ」。共に番組は昨年3月以降、司会者の自宅から放送を行うなど無観客のスタイルで継続されたが、本来の観覧スタイルに戻る。
パンデミック以降リモート授業となっているニューヨーク州立大学(SUNY)と市立大学(CUNY)は、秋学期以降対面授業の再開を予定しているが、生徒に対して、今後ワクチンが完全に承認されれば接種完了の義務付けを予定している。ハーバード大学やコロンビア大学など私立のアイビーリーグでも同様の要件を発表している。
先日ニューヨーク州のクオモ知事は、ワクチン接種を済ませた12〜17歳の生徒に、州立大学の奨学金や授業料免除などのインセンティブを与えると発表した。
これらも一見良きニュースのように聞こえるが、裏を返せば「ワクチンを接種していない人は参加できない」ということだ。
秘められた格差や分断はアメリカのみならず、ヨーロッパでも見られる。
外国人観光客の入国を制限していたイタリアでは、ワクチンを接種した日本人観光客に対し、隔離なしに入国を認める方針を固めたことが報じられた。
ロンドン発のCNBCの記事は今後起こり得ることとして、「ワクチン拒否者は、レストラン、ショップ、そのほかの場所への立ち入りだけでなく、飛行機の搭乗も禁止される可能性があり、接種済みと未接種が分断されるかもしれない」との見方を示した。
「ワクチン接種はあなただけの話ではない。これは義務なのだ」。
バイデン大統領は24日、感染症専門のファウチ医師や人気ユーチューバーらとコラボし、若い世代の未接種者に向け、このように訴えかけた。ホワイトハウスは、出会い系アプリ9社ともコラボし、若い世代へのワクチン接種を必死に呼びかけている。
社会的分断が叫ばれるアメリカで、ワクチンによる「新たな分断」がいま水面下で密かにうごめいている。