2021.06.07

さらば「デフレ経済」…これから「伸びる日本企業」「消える日本企業」を全公開!

リストラ、スピード経営がリスクになる
大原 浩 プロフィール

いいものを長く使うのがインフレ対応

インフレの特徴は、「新たに獲得するコストがどんどん跳ね上がる」ことである。

例えば私がオイルショックを経験したのは中学生の時だ。教材用の更半紙(ざらばんし。「わら半紙」ともいい、最初の頃は実際に藁を原料にしていた下級印刷用紙)の価格がほとんど毎月上昇したため、学校から「価格改定のお知らせ」を頻繁に家に持ち帰っていた記憶がある。

それに対して、過去四半世紀、特にデジタル分野では価格の下落はすさまじかった。昨日買ったパソコンと同じ値段で、もっと高性能なパソコンが手に入るのは珍しくないことであった。だから、購入のタイミングはできるだけ後にずらすのが当然だ。また、古いものを修理して使うよりも、新品を買った方がはるかに安くて高性能ということになる。

だから次々と新製品を購入する傾向が強まる。携帯電話も新しく契約したほうが、既存の契約を継続するよりもはるかにお得という状態が続いた。

 

よく考えたらこれは「正常な経済」とは思えない。より安価なものを次々と提供していけば、「空売り」のように、いずれは「ゼロ円の壁」に突き当たる。

もちろん、第1次世界大戦後のドイツのハイパー・インフレのように、「喫茶店でお茶をしている間に、コーヒーの値段が何倍にも上がった」とか、「パン1つを買うのに荷車1台分のお札が必要だった」などと言われる状況も歓迎できない。しかしインフレには「ゼロ円の壁」が無いから、長期的に見ればインフレが経済(成長)の基本だ。

インフレ時代には、「新たに何かをするためには、それまで以上のコストがかかる」から、次々と目新しいものを提供する経済ではなく、「価値あるものをより早く正確に見つけて、大事に育てる」経済が主流になっていくはずである。

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