菅義偉に首相はムリだった。なのに、なぜ「菅降ろし」が起きないのか

麻生、安倍…自民重鎮の策動「全内幕」
戸坂 弘毅

つのる不信感

2012年の第2次安倍内閣発足以降、菅は官房長官の座を手放さず、安倍政権の暗部まで知悉している。その菅から半ば脅され、怖がっているゆえに菅の歓心を買うような発言をしたというのだ。

確かに最近、安倍にとって警戒すべき出来事が相次いでいる。

まずは、東京地検特捜部が前経済産業相の衆院議員・菅原一秀の選挙違反事件で菅原本人を略式起訴したことだ。この事件で特捜部は、有権者への供与金額が少ないことや本人が経産相を辞任したことなどを踏まえ、現金供与の事実は認定した上で一旦は起訴猶予とした。ところが検察審査会が起訴相当と議決し、検察が再捜査した結果、供与金額が増えたこともあって起訴する方針に転換した。これによって菅原は事実上、政治生命を絶たれた。

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実は、「桜を見る会」前夜祭をめぐる政治資金規正法違反事件でも、特捜部は安倍の公設第一秘書の略式起訴で捜査を終結させたが、市民グループなどが安倍本人を起訴すべきだとして検察審査会に審査を申し立て、受理されている。刑事事件に詳しい弁護士らは、この事件で安倍本人を起訴することは無理だと口を揃えるが、安倍自身は審査会の行方を気にしているという。

そもそも、検察が「桜を見る会」前夜祭の問題を菅政権になった途端に事件化したことに安倍は不信感を抱いている。菅が検察に捜査を促したのではないかとの疑念だ。ロッキード事件の前例を持ち出すまでもなく、検察の捜査といえども時の政権トップの意向が影響する。この問題が最終決着するまでは疑心暗鬼にならざるを得ないのだ。

もう一つは森友学園問題だ。財務省の決裁文書の改ざん問題を巡り、自殺した元近畿財務局の職員の妻が、国などに損害賠償を求め訴訟を提起している。その裁判で5月に入り、国はこの職員が改ざんの経緯をまとめて職場に残した「赤木ファイル」の存在を初めて認め、近く裁判所に提出することを表明した。

国はこれまでファイルが存在するか否かも明らかにしていなかったのだ。この方針変更について、安倍に近い永田町関係者は「明らかに、菅政権による安倍に対する脅しだ」と警戒を強めた。

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