「マンガ舞台化」の元祖・宝塚
「マンガの舞台化」に関しては、意外と歴史は古い。1924年には、宝塚少女歌劇団(現・宝塚歌劇団)が当時大人気だった四コママンガ『正チャンの冒険』を舞台化。
この作品については、NHK朝ドラ『おちょやん』(2020~21年)で主人公竹井千代が正チャンを演じたためご存知の読者も多いだろう。事実、千代のモデル浪花千栄子が主役に大抜擢されたのが、当時所属していた「村田栄子一座」の舞台『正チャンの冒険』だったのだ。

その後も人気マンガが舞台化されることはあったが、おそらく2.5次元舞台の元祖として頻繁に言及されるのが、宝塚歌劇団(以下、宝塚と表記)による池田理代子の大ヒット少女マンガ『ベルサイユのばら』の舞台化(初演1974年)だろう。18世紀フランスを再現したきらびやかな衣装にメイク、そしてドラマティックな物語のおかげで、この舞台は大ヒットする。
だが、宝塚作品は出演するスターにあて書きした翻案が基本であり、前出の1番目の特徴には当てはまらないので、今日の2.5次元舞台の元祖と呼ぶのは難しい。
偉大な先達、セーラームーンとサクラ大戦
では、2.5次元舞台の源流はどの作品なのか。1991年にはSMAP主演のバンダイスーパーミュージカル『聖闘士星矢』が短期間上演されているが、ロングランとしてまず挙げられるのは、アニメ『美少女戦士セーラームーン』(1992~97年)の舞台化であるミュージカル『美少女戦士セーラームーン』シリーズ(1993~2005年)だろう。
いわずと知れたセーラームーンをはじめ、セーラー戦士たちが大活躍するこの舞台は、セーラーコスチュームに金髪、お団子頭の月野うさぎほかアニメのキャラクターを前景化し、世界観を再現した舞台だった。初代うさぎ役には大山アンザ(現・ANZA)、地場衛/タキシード仮面役には、浦井健治(6代目)や城田優(7代目)など、のちにミュージカル等で大活躍する俳優たちも輩出した。