アマゾンの「すごい働き方改革」
アマゾンはこの状況を劇的に変えます。
アマゾンが気づいたことは、労働者が歩いて商品をピックアップするよりも、棚が歩いたほうが生産性が高くなるという事実でした。そこでアマゾンは人間と同じぐらいの大きさの棚に商品を入れて、その下にロボット掃除機のルンバと同じような自走式の移動装置を設置することで倉庫の棚をロボット化します。
そのように業務をデジタルトランスフォーメーションすると職場は180度変わります。労働者はパッキングを行う場所に静止して、目の前にある棚の中の表示灯が光っている段の中から注文の商品をピッキングします。
ピッキングが終わるとその棚は移動して、次の棚が目の前にやってきます。こうしてアマゾンの倉庫ではピッカーと呼ばれる労働者たちの歩行距離は劇的に少なくなりました。立ち仕事は相変わらず長時間ではありますが、これがアマゾンが成し遂げた「働き方改革」です。

アメリカにはアマゾンエフェクトという言葉があって、アマゾンがどんどん生産性を上げていくことで、競争相手の企業がどんどん倒産していきます。これまではインターネット通販とリアル店舗の小売業という土俵の違う相手との競争で、勝利したアマゾンがつぎつぎと競争相手を閉店に追い込んでいきました。
しかしDXが進んでくると、これまでとは別の相手が危機に追い込まれそうです。
その観点でアマゾンのDXの事例としてもうひとつ「置き配」を取り上げてみます。