差別されていた側と同じマインドに
春香さんと話していると、10代後半の女性と話しているような感覚がある。自分ではない何かになりたくて、ブランドものを欲しがったり、必死でダイエットをしたりしていたあの頃の自分やその仲間たちのようだ。その時、春香さんが「今の10代はいいですよね」と言ってドキッとした。
「だって、アプリが発達して、自撮り画像がいくらでもかわいくデキる。私の時代は、そういうアプリもなかったから実際可愛くするしか、自分の気持ちを満たせなかった。
当時人気だったアイドル顔や女優の顔になりたいと、その写真を見せて、クリニックの先生に説明するんですよ。でも、アイドルの顔は自分とはまったく違う顔だから、仕上がる顔は当然ですが、元々の自分とは違う顔になるんですね。自分の顔が嫌で望んで変えているんだけど、やはり今までない自分の顔に変わるのは、うれしい気持ちもあるけど精神的にものすごく負荷がかかる。でも、やめられないんだけど……。
今の子は、自分の顔をベースに理想の顔をアプリで作ってSNSで自己主張できる。それってすごくいいなぁ、と思って。アプリで加工した顔は現実ではないけど、私の顔だって現実じゃないわけだし……」
さらに、春香さんはこういった。
「プラスサイズのタレントさんが、もてはやされても“自分も太ろう”とはなりませんし、和風の一重まぶたの女優さんが“クールビューティ”と言われてもその顔になるために大枚をはたく人はいないんですよ、世の中そんなもんです」
プラスサイズを含めボディポジティブを訴える人たちは、太ろう!と言っているのではなく、痩せていようが太っていようが、一重だろうが二重だろうが自分の体、自分自身を肯定しようということを伝えている。今のルッキズム批判は、素の自分が愛せないと負のループに憑りつかれてしまい、結局は自分を見失ってしまうことを指摘しているのだ。
小中学校からずっとルッキズムの被害者だった春香さんは、加害者からひどい言葉を浴びせられ続けた。憎んでいるはずのルッキズムが、自身の中に育ってしまったのではないか。もしかしたら、その矛盾を抱えていることが、彼女の苦しみになっているのかもしれない。

彼女の壮絶な人生は、前編に!
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