万引き多発、店舗閉鎖続出で岐路に立つ「バイデンの人権擁護政策」

弱者救済か治安維持かの選択再び
安田 佐和子 プロフィール

小売業者の苦境

万引き多発の代償は、旗艦店の閉鎖だ。

薬局チェーン大手ウォルグリーンは、カリフォルニア州のサンフランシスコで少なくとも過去5年間で17店舗の閉鎖を余儀なくされた。

調査会社コアサイト・リサーチによれば、2019年に閉鎖された店舗数は前年比63%増の約9300店と2012年に統計を開始して以来、最多を記録。コロナ禍を受け2020年には2年連続でこの記録を更新したことは、想像に難くない。「小売の終末(retail apocalypse)」と呼ばれる旗艦店舗が次々に閉店していく現象は、ネット小売へのシフトだけではなかったというわけだ。

実際、ワシントン・ポスト紙は、2020年に食に困る米国人が約5400万人とする米農務省の試算を紹介した上で、ペンシルベニア州フィラデルフィアでの万引き報告件数が前年比60%も急増したと伝えた。全米小売業協会(NRF)の調査でも、2020年において「万引きを含む店舗内での組織犯罪が増加した」との回答は75%を占めた。

 

万引き自体、国家的な緊急事態や景気後退に陥った際に増加する傾向がある。

2001年9月の同時多発テロ事件発生後は16%増、リーマン・ショック後は34%増を記録していた。コロナ禍で生活に困窮した人々が万引きに走ったとあれば、緊急事態という特殊要因も重なり、温情ある措置が講じられても不思議ではない。組織的な万引きの場合、ホームレスや無職の人間が実行犯としてスカウトされてきた事情もある。

関連記事